研究課題/領域番号 |
22K01497
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
藤生 源子 横浜国立大学, 大学院国際社会科学研究院, 教授 (80431394)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 動学ゲーム理論 / 異時点間の資源配分 / 投資の不可逆性 |
研究実績の概要 |
「本研究の目的」は、自然資源の異時点間における配分問題を、動学ゲーム理論を用いて解析的に分析することである。2022年度は、政権が交代する可能性を含んだ有限期間及び無限期間の動学ゲームモデルを構築し、来期政権を失う可能性のある政府が、現在の公共財の生産と公共財生産に使用される技術への投資へどのように資源配分を行うかについて解析的に分析を行った。生産技術へ投資を行うと、将来はより良い技術のもとで公共財を生産することが可能となり、将来の公共財の供給の増加につながる。 このような設定のもとで、公共財に対する選好が異なる2つの政党(プレイヤー)の最適戦略を導いた。また、投資が不可逆的であるケースと投資が可逆的であるケースの2つのケースについて考察した。公共財に対するウェイトが高い政党と低い政党とで最適な技術水準には違いが生じる。投資が可逆的である場合は、政権が交代すると新しい政党の最適な技術水準が達成され、定常状態における技術水準の分布は低水準と高水準がそれぞれ同じ確率で生じるという結果になった。 一方、投資が不可逆的であるケースでは、政権を取ってもすぐには最適な技術水準へ移行出来ないという可能性が出てくる。このようなケースにおいて、2つの政党の非対称性が大きい場合は、公共財へより大きいウェイトを置く政党は投資が可逆的であるケースよりも技術投資を増加させるという戦略を取る。高い技術水準を維持し公共財生産のコストを下げることで、自身が政権を失ったとしても、将来政権を取った政党がより多くの公共財を生産するというインセンティブが働くからである。これらの結果より、投資が不可逆的であることが全体として技術水準を高めより多くの公共財を生産され、より効率的な資源配分が達成されるという結果となった。研究成果については、セミナーや学会等で報告し、論文としてまとめている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画の段階においては、2022年度の目的は「政権が交代する可能性を含んだ2期間の動学ゲームモデルを構築し、来期政権を失う可能性のある政府が、自然資源の消費と再生産をどのように決定するかを解析的に分析する」としていた。現段階では、自然資源の再生産という特徴をモデルの中に取り込めていないが、おおむね目的は達成出来ている。拡張として計画していた①プレイヤーが対称なケース、②非対称なケース、③無限期間ケースについても分析を終えている。一方で、動学的非整合性の存在の影響については、今後の分析課題としている。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は2022年度に得られた分析結果を論文としてまとめ、学会報告及び学術雑誌への投稿を計画している。 また、モデルの拡張を行う。第一に、毎期使用できる資源が限られているケースについて分析を行う。現在のモデルでは各期に使用できる資源について制約をおいていないため、投資を行うことで最適な技術水準を瞬時に達成することが可能となっている。資源に制約をおくことで、技術水準が低い経済における将来への投資と現在の公共財の生産との間の資源配分問題を分析することができる。第二に、技術水準の調整にコストがかかるケースについて分析を行う。これまでの分析では、投資が可逆的で蓄積された技術を費用がかかることなく削減することが可能な場合と、投資が不可逆的で蓄積された技術は削減できない場合の2つの極端なケースを想定してきた。正の調整コストの導入は中間的なケースの分析を可能とする。第三に、枯渇資源と代替的な再生可能エネルギーが存在するケースを考え、それぞれの資源にどのように投資していくかを解析的に分析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
国際学会での学会報告を計画していたが新型コロナ感染症の状況を鑑み、2023年度に延期することとした。
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