• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2023 年度 実施状況報告書

非合理的行動と共同性が小口医療保険制度の導入におよぼす影響に関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 22K01498
研究機関神戸大学

研究代表者

福井 清一  神戸大学, 国際協力研究科, 名誉教授 (90134197)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
キーワード小口医療保険制度 / 現在バイアス / 損失回避性向 / 社会的選好
研究実績の概要

本研究の目的は、行動経済学視点から小口医療保険加入率を向上させるための方策を検討することであり、そのために、実験ゲーム等により計測した個人特性の数量指標と、別途推計した新しい保険スキームに対する個人の支払い意思額のデータを用い、個人特性が新たな保険スキームへの需要にどのような影響を与えるかを推計し、非合理的心理の是正が小口医療保険の加入率向上に有効な政策手段であるかを検証しようというものである。
調査対象地域であるカンボジア農村において、2022、23年度に予定していた調査は、コロナ禍や個人的事情が重なり、本格的に実施することが出来なかった。
そこで、本研究の開始前の2021年以降、コロナ禍によりカンボジア農村社会が激変していることも考慮し、本格的調査の実施を繰り下げ、まずは、2023年度末から2024年度初旬にかけて本格的調査を再設定するために必要な情報を収集すべく短期間の予備調査を実施した。その結果、従来型のコミュニティーを基礎とした小口医療保険ではなく、小口信用機関が顧客に提供する医療保険が普及しているという注目すべき事実が明らかとなった。この点を踏まえ、本格的調査は2024年9月に実施することとした。
2023年度における研究成果は、①過去の科研費による調査で収集したデータにもとづき、本研究の目的に即して離散型選択モデルを利用した小口医療保険の需要分析を行い、損失回避性や現在バイアスが小口医療保険の購入に影響を与えることを明らかにしたこと、および、②CSES2017,2019,2021から構築したデータ・ベースにより、小口信用機関からの加重債務による破産と疾病との関係を分析し、従来指摘されている加重債務と疾病との強い関係が見出されなかったことである。①の成果は、国際学術誌に投稿中で、②の成果は2024年秋の学会で報告する予定である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

4: 遅れている

理由

当初は、2022年度9月に調査を実施する予定であったが、コロナ禍による渡航制限のため、10月まで渡航制限が緩和されなかった。また、2022年度後半は、私大で常勤の仕事があり、2023年2月半ばまでは、授業や入試業務のため1週間以上の海外渡航は困難であったうため、十分な調査期間での調査の実施は困難と判断した。2023年度はそれまで勤めていた私大を定年退職したが、母の介護が必要となり2023年は国内旅行すらできない状況であった。

今後の研究の推進方策

2022年度、2023年度に繰り越した予算の中から200万円程度の予算を費やし、近年の円安も考慮し2024年9月に前年度に予定していた現地調査を新たな枠組みを用いることで規模を縮小し、以下のような手順で実施する予定である。
新たな枠組みというのは、仮想的医療保険ゲームとProspect Theory(PT)にもとづくリスク・ゲームを用いて、医療保険の選択とPTにもとづくリスク選好との関係を数量分析の手法を用いて明らかにしようというものである。
そのために、まず、カンボジアのシェムリアップ州農村地域において、150世帯を標本世帯として抽出し、これらの標本世帯の資産、所得、家族構成、過去の疾病経験、医療機関での治療経験、家族の健康状態、ショックに直面した場合の対応、過剰消費を防ぐためのコミットメントの方法などに関する家計調査、アンケート調査を行い、個人特性に関する基礎的情報を収集する。また、標本世帯員を対象に、仮想的医療保険ゲームに参加してもらい、各世帯がどのようなタイプ(保険を購入しないことも選択肢の一つ)の医療保険を選好するかを把握する。次に、リスク選好等を測定するための実験を行う。このようにして収集された情報を用い、世帯員の保険選択とPTにもとづくリスク選好の指標、および、世帯・個人特性との間の関係を、一般的多項選択ロジットモデルにより推計する。
仮想的医療保険ゲームでは、同一世帯に複数回ゲームに参加してもらうため、ゲームの途中で脱落する可能性を考慮し、脱落バイアスに対応する必要がある。本研究では、この点についてもIPW(Inverse probability weighted)の方法を援用して対処する。

次年度使用額が生じた理由

当初、2022年9月に予定していた現地調査が、カンボジア政府によるコロナ禍対応の行動制限により実施が困難となった。
その後、2023年2月中旬まで、勤務していた大学の授業や入試関係業務のために調査ができず、また、2023年2月後半から3月にかけての時期は、円安により当
該年度の予算では調査費用が賄えなくなったことにより調査を実施することができなかった。
さらに、2023年中は、母の介護が必要となり、海外渡航が困難であったため、2023年度末まで海外での調査ができなかった。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2023

すべて 学会発表 (1件) 図書 (1件)

  • [学会発表] The influence of discrimination against migrants on the wage gap in Chinese urban labor market2023

    • 著者名/発表者名
      Seiichi Fukui
    • 学会等名
      地域農林経済学会
  • [図書] 開発経済を学ぶ 改訂版2023

    • 著者名/発表者名
      福井清一、三輪加奈、高篠仁奈
    • 総ページ数
      288
    • 出版者
      創成社
    • ISBN
      978-4-7944-3242-1

URL: 

公開日: 2024-12-25  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi