本研究の目的は,国際移動可能な資本がある場合に,貿易政策・国内政策がどのように決められるか,また世界厚生を改善する貿易協定・政策協定はどう決めるべきかについて,独占的競争・一般均衡の枠組みを用いて明らかにすることである.この目的に対し,本研究は輸送費用なしで貿易可能な財(outside goods)を仮定しない二国可動資本(Footloose Capital)モデルを用いて分析を行う.昨年度は資本を可変投入,労働を固定投入とする生産技術を仮定し一定の分析結果を得た.今年度はこの生産技術を拡張し,労働と資本に代替性がある様々なケースについて検討を行った.その結果,われわれが前提としているCES(Constant Elasticity Substitution)選好・一部門のモデルであれば,レッセフェールにおいて資源配分は効率的となること,ベンサム型世界厚生関数を仮定した場合,レッセフェール資源配分は一般にファーストベストとはならないことが明らかとなった.次に昨年度と同様,輸入関税,輸出関税,生産税(資本税)を想定した上で,①世界厚生を最大にするよう全ての税について協調を行う協定(deep trade agreements),②輸入関税,輸出関税のみについて協調する従来的な貿易協定(shallow trade agreements),③全く協調を行わない場合のナッシュ均衡,の各分析を開始した.
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