研究課題/領域番号 |
22K01521
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
白石 小百合 横浜市立大学, 国際商学部, 教授 (70441417)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 主観的幸福度 / ウェルビーイング / アンペイドワーク / 家事育児 / ワーク・ライフ.バランス / 家庭内ケア |
研究実績の概要 |
23年度の研究実績は完成論文が1本、進行中の研究テーマが4本である。完成した論文は、プロトコル論文である(Hara et al 2024, BMJ Open)。こちらは、独自に調査した横浜市在住の子育て世帯を対処とした子育てとウェルビーイングに関する研究(横浜市立大学ハマスタディ)の研究概要をまとめた。 進行中の研究についてはまず、このハマスタディの個票データと地理情報(GIS)を組み合わせ、「「子育て資源」へのアクセシビリティが、子育て世帯のウェルビーイングに与える影響」をテーマに設定し、23年度中はデータ分析の戦略を立てた。具体的には、GISを用いて、子育て世帯の子育て資源へのアクセスを定量化した上で、アクセスの程度を幸福度関数に入れた推計を行う。子育て資源は小児科クリニックと保育所を取り上げる。 次に、「慶應義塾家計パネル調査」(KHPS)を用いた研究は、「家庭内アンペイドワークがもたらす夫と妻の幸福感」との論題で第17回行動経済学会にて一般報告とポスター発表を行った。研究の背景として、既婚女性の仕事と家事育児の二重負担と,その背景にある夫の長時間労働の負担など,ワーク・ライフ・バランスの改善が社会課題である.そこで有償労働と家事育児の相互作用を考慮しながら,妻と夫が行う家事育児が,本人,そしてパートナーの幸福感を高める可能性について考察することを目的とする.主観的幸福度を被説明変数としたパネルデータ分析の結果,家事育児の分担が家計内のウェルビーイングにプラスの効果を与える可能性が示唆された. 3つめとして、「横浜市立大学生に向けた献血促進ナッジの研究」は日本赤十字社様協力の下ナッジ実験を行い、第17回行動経済学会にてポスター発表を行った。 最後に、独自のアンケート調査を元に分析した「主観的厚生に影響を与える日常の習慣」も日本行動計量学会第51回大会にて一般報告を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
23年度は当初の予定通り、4本の研究について、研究成果をまとめ、学会報告を中心にアウトプットを行った。 本研究課題は、学内外の研究者、また大学院生との共同研究を行っており、同時に複数の研究を進めている。研究以外の学内業務もこなす必要があり、時間制約があるが、共同研究者とのコミュニケーションを密にとることで、効率的な作業を進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題は、学内の研究者、また大学院生との共同研究を行っており、同時に複数の研究を進める点が、メリットとデメリットの両面を持つ。メリットは研究テーマを広く深く設定することが可能である。デメリットとしては、それぞれが同時進行するための作業が分散する傾向がある。そのため、23年度は一部の研究テーマについては、論文投稿まで至らなかったが、学会報告にて論文の完成に向けた有益なコメントを多数いただいた。24年度は、それらのコメントを踏まえ、本研究課題を学術成果として発表し社会に還元するため、論文投稿を行っていく。 「「子育て資源」へのアクセシビリティが、子育て世帯のウェルビーイングに与える影響」研究は、24年度はデータ分析を進めて論文を書き進め、9月末に査読付き国内学術雑誌に投稿予定である。 「家庭内アンペイドワークがもたらす夫と妻の幸福感」については、24年度に改訂作業を行っており、7月末までに英訳し、ディスカッションペーパーに提出するとともに国際学術雑誌に投稿予定である。 「横浜市立大学生に向けた献血促進ナッジの研究」は、研究成果を一般化するため、全国の若年層を対象としたWeb調査を9月以降に実施予定である。 「主観的厚生に影響を与える日常の習慣」については、論文を改訂し、投稿を行っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
23年度はデータ分析と学会報告を中心とした研究活動を行った。そのため、支出は、学会報告のための旅費、データ分析のための機器類の支出が主であった。 24年度は、進行中4本の研究について、すべて査読付き国際学術雑誌への投稿を予定しており、翻訳補助と投稿料に支出する(概算で10万円)。 「横浜市立大学生に向けた献血促進ナッジの研究」については全国の若年層を対象としたWeb調査を実施予定であり、その調査費用を支出予定である(概算で60万円)。
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