研究課題/領域番号 |
22K01554
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
三輪 宏太郎 九州大学, 経済学研究院, 教授 (70897727)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | アナリスト / 過小反応 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、投資家と会社間そして投資家間の対話が、投資家の期待形成及び株価にどのような影響を与えるかを解明することである。特に、決算説明会・投資家ミーティングにおける発言内容、ソーシャルメディアにおけるコメントなどを使用し、重層的に影響を分析する。 本年度は、対話を通して得られた情報がアナリストレポートを通して発信された場合、投資家はどれくらい素早く情報を織り込むかについての分析を中心に行った。 アナリストレポートは、市場が開いていない夜間に発行する傾向にあることから、場が開く何時間前に発行されたかによりレポートを分類した。そして、各カテゴリーのレポートに対して、寄りの時点で、株価がどれくらいアナリストのレポートの内容を織り込むか分析した。その結果、場が開く2時間以上前に発行されたレポートに対しては、場中でのドリフト反応(遅延反応)が観測されなかった。これは、レポート発行後2時間以内に情報が株価に織り込まれることを示唆する。一方で、レポートが複数銘柄にまたがる情報を含んでいる場合、1~2週間程度継続する遅延反応が観測された。複数銘柄にまたがる情報は株価へのインパクトが明示されないことから、遅延反応が顕著になっていると推察される。また、単一銘柄に関する情報であっても、他のアナリストと比較して極端に弱気な予想の場合は、2~3週間程度継続する遅延反応が観測された。 これら研究は、先行研究において十分に検証されなかった複数銘柄にまたがる情報や弱気な予想の価値と、それに対する投資家の反応の遅れを解明したという点で、新たな知見を提供するものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
対話データの構造化が、早期に効率的に行えたことや、早期に仮説を支持する頑健な結果が得られたため、学会・ジャーナルでの公表を前倒しに行うことができた。その結果、今年度は、国際学会において5発表、国内学会1発表、査読付国際学術雑誌において1論文を掲載することができた。
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今後の研究の推進方策 |
研究が前倒しに進んでいることを鑑み、発展的課題に取り組む。具体的には、対話等の影響を受けたアナリストの情報発信が、投資家(及び株式価格)にどのような影響を与えるかを分析する。また、Q&Aの順番、オンライン・対面方式による影響の違いなど、対話の影響をより多面的に分析する。
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