研究実績の概要 |
本研究の目的は ZLBに直面する (A) 小国開放経済, (B) 名目為替相場のパススルーが不完全な環境, (C) 2国経済, それぞれにおいて研究課題の核心をなす学術的「問い」で述べた(I), (II)を明らかにすることである. 本年度は, ZLBに直面する(C)でのMF政策のインフレ率やGDPの安定化の観点からの有用性を公債発行による財政刺激 (DF) 政策, および金融政策のみが明示的に行われているケースとの比較により明らかにした. 有用性はカリブレーションによって得られたCPIインフレ率およびGDPが負の需要ショックに際して、財政刺激策を伴わないケースと比較して、回復の程度がより高い政策がより有用な政策であるという規範の下判断した. (2次近似された効用関数から導かれる厚生損失関数から計算される厚生損失の比較分析は意味をなさないため行わなかった). 同様に, カリブレーションによって得られたマネーストック成長率の経路からCPIインフレ率およびGDPを安定化させるマネーストック成長率の経路, 消費の実質利子率の経路, 交易条件の経路を明らかにした. 次いで減税及び政府支出の増加の乗数効果をさまざまな価格の硬直性, 減税および政府支出の規模, および経済の開放度(あるいは輸出入のGDP比)もしくは相対的規模の下で求めて乗数効果とそれらパラメータとの関係を明らかにすることでMF政策の有用性を明らかにした. 加えて価格の硬直性や財政刺激政策の規模のMF政策がもたらす高価への影響も明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は当初の予定通り(C)の分析を行うことができた (A, Bの分析は22年度に行った). それぞれのの分析においてMF政策のインフレ率やGDPの安定化の観点からの有用性をDF政策, および金融政策のみが明示的に行われているケースとの比較により明らかにすることができた。同じく政策の有用性はカリブレーションによって得られたCPIインフレ率およびGDPの動学の負の需要ショックに対する回復の程度の比較をもって回復の程度がより大きい政策がより有用な政策であるという規範の下判断することができた (当初、経済厚生損失を規範とすることに考えたが分析の趣旨に反するので回復の程度をもって判断することにした). 同様に,カリブレーションによって得られたマネーストック成長率の経路からCPIインフレ率およびGDPを安定化させるマネーストック成長率の経路を明らかにすることができた. 加えて減税及び政府支出の増加の乗数効果をさまざまな価格の硬直性, 減税および政府支出の規模, および経済の開放度(あるいは輸出入のGDP比)もしくは相対的規模の下で求めて乗数効果とそれらパラメータとの関係を明らかにすることでMF政策の有用性を明らかすることができた.これらのことは研究計画調書に記されたとおりであり, 得られた結果は当初予定したとおりのものであった.
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