研究課題/領域番号 |
22K01562
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
齋藤 卓爾 慶應義塾大学, 経営管理研究科(日吉), 准教授 (60454469)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | 企業統治 / 取締役会 / 社外取締役 |
研究実績の概要 |
取締役会の最も重要な任務の1つは経営者の解任、選任であるとされている。本年度はこの任務を検証するために、日本企業の経営者の属性がどのように変化したのかを検証した。もし社外取締役の増加により取締役会の役割に変化が生じているのであれば、選任される経営者も変化していると考えられる。そのために日経平均採用銘柄251社の1990年から2020年までの社長約1,000人のキャリアを調査した。社長の入社年齢は若返っており、新卒生え抜きの社長の比率が上昇していた。逆に26歳から40歳の間に転職して入社したと考えられる社長、経営者として外部から招聘されたと考えられる社長の比率は減少していた。特に、かつて多かった銀行派遣や官公庁から天下り社長が減少したのに対して、いわゆるプロ経営者は増えておらず結果として経営者の外部招聘は減少傾向にある。内部昇進した社長の入社から部長就任に要する期間は約22年と一般的な昇進スピードと同様であった。この結果は日本企業では社長まで出世する者であってもその昇進スピードはその他の者と変わらず「遅い昇進」の範疇にあることを示している。またこの傾向は1990年以降ほとんど変化していなかった。一方で、部長就任から役員昇進に要する期間は1990年以降長期化し、役員就任から社長昇進に要する期間は短期化していた。この結果、社長に就任する年齢は1990年以降ほぼ60歳で変化していなかった。これらの結果は、日本企業を取り巻く環境が大きく変化する中でも、経営者のキャリアが大きく変化していなかったことを示している。この結果は、増加したとはいえ、経営者の選任に強い影響を与えるほどには社外取締役がパワフルでないことを示している可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
これまでの研究で用いてきたデータベースを利用する予定であったが、検証期間を延ばす必要が生じたため、データベースを拡張する必要が生じたため。
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今後の研究の推進方策 |
次年度はデータベースの拡張を行い、取締役市場が一連のコーポレートガバナンス改革によりどのように変化したのかに関する基礎的な分析を行っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
データを延長する必要が生じたため。また新型コロナの影響で研究会がオンラインとなり、出張費を使用しなかった。
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