研究課題/領域番号 |
22K01573
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研究機関 | 大和大学 |
研究代表者 |
大西 匡光 大和大学, 政治経済学部, 教授 (10160566)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 市場価格インパクト・モデル / 取引執行 / 確率動的計画 / 確率制御 / 確率ゲーム |
研究実績の概要 |
金融資産の売買取引執行に関して,申請者らがごく最近に提案した離散時間,単一資産の市場価格インパクト・モデルを用い,単一の大きなトレーダーによる取引執行の最適化問題,および複数の大きなトレーダーによってなされる取引執行ゲームのそれぞれに対する申請者らの最近の諸研究を,さらに推し進めた. 具体的には,連続時間の設定で,金融市場における取引環境がMarkov過程,とりわけOrstein-Uhlenbeck型の確率過程に従う場合の,単一の大きなトレーダーの最適取引執行問題を確率制御問題として定式化して分析を行い,最適値関数,最適取引戦略の特徴付け,そしてその存在・一意性について精査した. また,離散時間の設定で,やはり金融市場における取引環境がMarkov過程,とりわけ離散時間のOrstein-Uhlenbeck型過程と見なせる1次の平均移動型過程に従う場合の,複数の大きなトレーダーによってなされる取引執行ゲームを確率ゲームとして定式化し,均衡分析を行い,サブケーム完全なNash均衡取引戦略の特徴付けを行った. そして,大きなトレーダー(達)と多数の小さなトレーダー達[群衆トレーダー]との相互作用を,より現実に忠実に描写する離散時間モデル,連続時間モデル,そして複数資産モデルへと発展させることを目指す挑戦的研究の緒にもついた. さらに,先端的な確率制御,確率ゲーム,平均場ゲーム,等を用いた,新たな挑戦的研究課題にも取り組むための研究情報の収集についても積極的に行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
連続時間の設定で,金融市場における取引環境がMarkov過程,とりわけOrstein-Uhlenbeck型の確率過程に従う場合の,単一の大きなトレーダーの最適取引執行問題を確率制御問題として定式化して分析を行い,最適値関数,最適取引戦略の特徴付け,そしてその存在・一意性について精査したが,最適取引戦略の特徴付けと数値的な導出については成功したものの,存在・一意生については完全な解決には至らなかった. また,離散時間の設定で,やはり金融市場における取引環境がMarkov過程,とりわけ離散時間のOrstein-Uhlenbeck型過程と見なせる1次の平均移動型過程に従う場合の,複数の大きなトレーダーによってなされる取引執行ゲームを確率ゲームとして定式化し,均衡分析を行い,サブケーム完全なNash均衡取引戦略の理論的特徴付けについては成功したが,数値的導出までには至らなかった. 一方,これらの研究成果については,国内外の関連学会・研究集会で研究報告を行い,概ね好評価を得ることができた.
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今後の研究の推進方策 |
金融資産の売買取引執行に関して,申請者らがごく最近に提案した離散時間,単一資産の市場価格インパクト・モデルを用い,単一の大きなトレーダーによる取引執行の最適化問題,および複数の大きなトレーダーによってなされる取引執行ゲームのそれぞれに対する申請者らの最近の諸研究を,さらに推し進める. 具体的には,連続時間の設定では,定式化した確率制御問題での,最適値関数・最適取引戦略の存在・一意生についてはできる限り完全な解決を目指すこと,そして,離散時間の設定では,定式化した確率ゲームのサブケーム完全なNash均衡取引戦略の数値的導出とモンテ・カルロ・シミュレーション実験を様々な問題パラメータの元で実施して,学術的・実務的な知見を得たい. また,大きなトレーダー(達)と多数の小さなトレーダー達[群衆トレーダー]との相互作用を,より現実に忠実に描写する離散時間モデル,連続時間モデル,そして複数資産モデルへと発展させることを目指す研究を推進する. さらに,先端的な確率制御,確率ゲーム,平均場ゲーム,等を用いた,新たな挑戦的研究課題にも取り組む.
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次年度使用額が生じた理由 |
わずか271円の執行残額が生じたのみで,次年度以降の支出計画に全く影響は無い.
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