研究課題/領域番号 |
22K01581
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
池田 直史 日本大学, 法学部, 准教授 (90725243)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 異質的期待 / 空売り制約 / 新規株式公開 / 資産価格 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、投資家の期待を計測した上で、その期待がどのように形成されるのか、そして、形成された期待が金融市場にどのような影響を与えるのかを明らかにすることである。本年度は、空売り制約の下で投資家の異質的期待が資産価格に与える影響を分析した論文に対する、投稿先ジャーナルからの大幅改訂要求に優先的に対応し、無事に掲載が決まった。この論文では、新規株式公開(IPO)に着目して、投資家の異質的期待と空売り制約を仮定する理論の検証を行った。この理論に基づけば、空売り制約が存在する場合、投資家の期待がばらつくほど、楽観的な投資家の意見のみが価格に反映されるためにIPO直後の株価が過大評価されると予測される。さらに、その後の投資家の学習によって期待が修正され、IPO後の株式収益率が低くなると予測される。これらの予測を検証するために、日本の入札方式によるIPOに焦点を当て、各IPOに対する投資家の期待が正規分布に従っていると仮定して、入札情報からその平均値と標準偏差を推計した。そして、推定された平均値を投資家の楽観度の平均的水準、標準偏差を投資家の期待のばらつきの代理変数として分析を行った。その結果、IPO直後の株価の過大評価に対しては、投資家の楽観度の平均的水準と期待のばらつきの両方が説明力を持つものの、IPO後の株式収益率に対しては、楽観度の平均的水準のみが説明力を持つことが明らかになった。このことは、投資家の期待の収束よりも、楽観度の平均的水準の修正がIPO後の株式収益率の低下を引き起すことを示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、投資家の期待を計測した上で、(1)その期待がどのように形成されるのか、そして、(2)形成された期待が金融市場にどのような影響を与えるのかを明らかにすることを目的としている。本年度は、(1)についてはあまり進展しなかったものの、(2)に関して、投資家の異質的期待が資産価格に与える影響を分析した論文が、国際査読ジャーナルに掲載が決まったため、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、新規株式公開に着目して、投資家の期待分布の特性を直接的に推定する。そのために、新たなデータの取得やその整理を行う。そして、推定した投資家の期待の指標が、どのような要因によって影響を受けるのかを分析する。その結果を論文にまとめ、最終的には国際査読ジャーナルへの掲載を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、新たなデータの取得を後回しにして、投稿先ジャーナルからの大幅改訂要求に対応するため、論文の改訂作業を優先的に行った。そのため、新たなデータの購入は次年度に繰り越すことになった。次年度は、本年度に購入しなかったデータを購入する予定である。これに加え、論文の英文校正費用、投稿費用などに使用する予定である。
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