研究課題/領域番号 |
22K01582
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研究機関 | 武蔵大学 |
研究代表者 |
徳永 俊史 武蔵大学, 経済学部, 教授 (30329750)
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研究分担者 |
和田 賢治 慶應義塾大学, 商学部(三田), 教授 (30317325)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | LRRモデル / Epstein-Zin型選好 / シミュレーション / GMM |
研究実績の概要 |
代表者と分担者による共著論文「日本のデータを使ったLRRモデルの推定」を『武蔵大学論集』(第71巻、2024年3月発刊)に掲載した。この論文では、Bansal and Yaron (2004)が提唱したLRR(Long Run Risk)モデルのパラメーターをGMMで推定する方法を提案したConstantinides and Ghosh (2011)の整理を行うとともに、日本のデータを使った実証分析を行っている。結果は、Constantinides and Ghosh (2011)が使用した米国のデータと日本のデータともに、標本の統計値がLRRモデルからえられるモーメントとはあまりうまくフィットしないことを示しており、LRRモデルの再評価を含めたモデル推定方法の見直しが必要であると結論付けている。とりわけ、LRRモデルを構成する4つの式(1.潜在変数プロセス、2.そのプロセスのボラティリティ、3.1と2に依存する消費変動プロセス、4.1と2に依存する配当変動プロセス)のうち、2.潜在変数プロセスのボラティリティを表す2つのモデルパラメーターのデータに対する感応度が極めて高く、モデル全体の推定を不安定にしている。この結果については米国データを使ったConstantinides and Ghosh (2011)の推定結果をみても同様の傾向が予想される。今後はこの影響分析とモデル再構築が課題である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度の遅れの原因が解消されなかった。具体的には、最終的に推定したいモデルのベースとなるLong Run Riskモデルの日本データへの当てはまりが想像以上に悪く、その原因の追求と対応策の検討に時間がかかっている。ただし、今回、論文としてまとめることができたので来年度は次のステップに進むとともに遅れの解消に努めたい。
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今後の研究の推進方策 |
今年度執筆した論文の延長として、Pohl, Schmedders, and Wilms (2018)が主張するように、日本のデータを使った場合でもCampbell-Shiller一次近似が結果に大きなマイナスの影響を与えるのかについて検証する。さらに、Constantinides and Ghosh (2017)と同様、徳永・和田 (2020)がアセットプライシングにおいて重要な役割を果たすことを確認した家計の異質性とLLRモデルの融合について検討する。Constantinides and Ghosh (2017)は、LRRモデルの考え方をベースに、家計の異質性、とりわけ、家計の相対的消費成長のクロスセクション歪度を考慮したアセットプライシングモデルを提案しており、徳永・和田 (2020)でも、日本の家計の相対的消費成長のクロスセクション歪度が日本の株式市場に長期にわたって存在するバリュー効果を説明することを報告していることから、今後はモデル拡張によるさらなる考察を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
データ購入にかかる経費が見積りより少なかった。また予定していた学会発表が実現しなかった。これらについては次年度に研究に必要な書籍や消耗品を購入する費用の一部として使用する計画である。
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