研究課題/領域番号 |
22K01595
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研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
岩間 俊彦 東京都立大学, 経営学研究科, 教授 (20336506)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | ジョン・ブライト / 伝記 / イギリス / 平和 / 平和主義 / リベラル / 消費主義 / 国制主義 |
研究実績の概要 |
研究報告「ジョン・ブライトと平和主義」を2023年5月の社会経済史学会大会で行った。報告後の質疑応答から、①ブライトと同時代の平和理念、特にキリスト教の宗派によるメディアや社会運動との類似と相違点、②ブライトと、キリスト教の結社と密接にかかわる社会運動家等と間の社会関係、③ブライトや盟友リチャード・コブデンを1850年代以降の平和運動の中核に位置づけようとする先行研究の再検討、といった課題と改善点を確認できた。 ブライトと平和主義の関係は、これまでの資料収集や分析と先行研究の精査から、①1830年代末から穀物法廃止という反穀物法運動や階級の問題に取り組んだ時期、②1840年代末から1860年代末という政治経済上の改革運動の一方で、インド他の帝国統治、クリミア戦争への反対と平和運動への関与、アメリカ南北戦争で論陣を張った時期、③1860年代末から1880年代というアイルランド他の帝国に関わる統治、軍事介入、戦争に関わる発言や政治的行動の時期、から解明できることが判明した。現時点において、ブライトと平和主義は、首尾一貫した実践ではなく、親族や友人の網の目、政治関係、公論との協調や緊張、社会運動や党派・結社に依拠しながら成立していたという仮説をたてている。 上記の研究成果をふまえて、平和学から歴史研究の精緻化を目指すために、日本平和学会にて、ブライトと平和に関する研究報告申し込みを行った。 さらに、前年度まで研究報告等を行ってきたブライトと消費主義に関する学術論文も追加すべき考察点を加えて一貫した議論となるよう推敲して、学術論文として投稿できるよう改訂作業を進めている。また、これらの研究遂行の過程で、ジェンダー史の最新成果をブライトの伝記研究のような分野にも適用する必要性が明らかとなったため、その一環として『歴史学研究』にジェンダーと歴史研究の方法論に関する論文を掲載した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ブライトの資料と関連する2次文献の読解、考察が進み、ブライトと消費主義、ブライトと平和主義、についての論文原稿の改訂、研究報告原稿・資料が作成されており、資料調査、文献と資料の考察、関連する研究報告については進行しており、研究成果の公開の道筋も予定が明らかとなってきた。今後、いっそう、緻密な資料分析、文献の精査と課題の精緻化、報告原稿や論文における議論の改良を進める計画も立てていく予定である。 他方で、2022年末と翌年の年始の長期入院から復帰して、上記の文献・資料調査、文献や資料読解、議論の構築等々を進めてきたが、想定以上の急激な円安の進行等もあり、海外資料調査等を集中的に行うことは次年度に統合して行うこととしため、資料調査については当初の予定を改善して対応することとした。 以上のような進行状況から表記のような区分とした。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は、日本平和学会、発展と平和分科会:リベラルな平和を再考する、にて、「ジョン・ブライトと平和の関係を再考する―リチャード・コブデン、モラル、そして国制主義(constitutionalism)からの考察」を報告する。昨年度の研究報告へのフィードバックをふまえた成果を平和学の観点から精査することにより、ブライトと平和に関する論文の作成準備を行う。また、海外の教育研究機関のセミナーまたは海外の国際学術会議での英文報告の要旨作成と報告申し込み準備を行い、英文での研究報告機会を設けることを目指す。 ブライトと消費社会に関する学術論文についても作成を継続し、英文での報告原稿のための要旨を作成し、英語での学術報告準備も進める。関連して、物質論的転回といわれる研究方法が、ブライトと消費社会に関する研究を改善するために有用であると判明したので、この転回に関する動向や方法を研究文献から検討して、上記の論文作成作業に活かす。 また、ブライトと国制主義に関する研究報告を行うための調査や議論の前提となる証言や事実の集積準備を行い、関連する二次文献の精読を通じて、課題設定の精緻化も行う。 上記の研究報告、報告原稿や今後の申し込み要旨、論文の原稿作成に関連して、2024年度後半(2025年1月または2月を予定)には、これまでの研究から判明した確認点、注目点を含むと考えられる資料について、イギリスの英国図書館、手稿部、アルフレッド・ジレット・トラスト、文書館にて資料調査を行い、収集した資料についての確認、収集、整理、読解、分析につとめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究サーベイや資料分析のために、書籍他の購入や資料の電子化を中心に予算を執行し、関連する消耗品の購入も行いつつ、研究報告の国内出張に使用したが、予定していた海外資料調査が、2023年初めの長期入院から復帰し研究に着手したことによる資料調査計画の変更と想定を超える円安進行によって、実行できなかったため残額が発生し、次年度へ繰り越した。
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