研究課題/領域番号 |
22K01601
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研究機関 | 創価大学 |
研究代表者 |
勘坂 純市 創価大学, 経済学部, 教授 (20267488)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | 農業 / 肥料 / 20世紀初頭の日本 / 日本とヨーロッパの比較 |
研究実績の概要 |
2023年度は(1)日本における施肥・土壌改良の分析、(2)比較対象となるイングランドの農業生産の分析を行った。 (1)20世紀初頭日本における農業生産の解明を、主に、肥料使用・土壌改良の観点から分析を進めた。米穀検査の発展によって、農家は米穀の生産量と品質の向上をともに求められるようになった。こうした観点から、東海地方(愛知県、岐阜県、三重県)の農家経済調査等を用いて農家単位で、また、県統計書等をもちて郡県単位で、各栄養素(窒素、リン、カリウム)の循環を解明する分析を進めた。残念ながら、当時の多くの調査は、農家経営の経済的「合理化」を目的として行わており、栄養素の循環のようなエコロジカルな観点は少ない。しかし、時により調査の中で言及される肥料使用料のデータから、いくつかの農家経営や地域では栄養素の循環を解明できた。化学肥料が本格的に普及する前の施肥・土壌改良の分析は、Chorley(1981), Allen(2008), Gizicki-Neundlinger and Guldner (2017) などによって、ヨーロッパでは積極的に進められている。本研究は、こうした観点から日本の農業生産を見直そうとするものである。 (2)近代以降のイングランドの農業市場発展の基礎となる中世の農業生産について、“The Magnitude and Structure of Peasant Rents within the Manorial System of Thirteenth-Century England: A Study of the Hundred Rolls of 1279-1280”を執筆し、3月に海外ジャーナルに投稿した。現在審査中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
また、データ入力補助で予定していた学生アルバイトの雇用ができなかったため、当初予定していた米国の市場構造の分析が2024年度以降の課題となっている。 米穀検査制度の背景としての農業生産の分析を進める中で、肥料使用・土壌改良の問題が決定的に重要であるとに意識したので、2023年度はその分析に注力した。しかし、化学肥料が本格的に普及する前の各栄養素(窒素、リン酸、カリウム)の循環は、これまで十分に研究が積み重ねられておらず、こうした観点を加えることで、本研究の意義はより高まると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は以下の (1)20世紀初頭、化学肥料が本格的に普及する前の日本農業における栄養素(窒素、リン、カリウム)の分析をまとめ、国内外で発表するための準備を行う。国内では、2025年春の社会経済史学会、国外では2025年7月に開催予定の第18回国際歴史地理学会(International Conference of Historical Geographers)へのプロポーザルを提出する予定である。 (2)(1)で示した農業生産のもとで展開した米穀検査の実態を解明するために、各県の米穀検査報告書、農業試験場報告などデータ入力を行い、分析を進める。 (3)海外ジャーナルにに投稿した論文の書き直しを進め、刊行の準備を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
データ入力補助のため予定していた学生アルバイトの雇用ができないため、人件費・謝金を使用することができなかった。また、予定していた資料調査のための出張が、校務等でできなくなったため、使用できなかった。2024年度は、学生アルバイトを使用して米穀検査に関するデータベースの作成を進めるとともに、夏季に地方での資料調査を実施する予定である。
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