研究課題/領域番号 |
22K01604
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
西村 成弘 関西大学, 商学部, 教授 (70511723)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 特許 / 特許彙報 / 技術市場 |
研究実績の概要 |
本研究は、第二次世界大戦以前の日本の技術市場を分析対象とし、内部技術市場の成長が技術市場の成長にどのような影響を与えたかについて、ミクロ的な視点から明らかにすることを目的としている。そのため、本研究では①特許書誌データベース、②移転データベース、③消滅データベースの3つのデータベースを構築し、④法人特許の成長と特許取引のミクロデータ分析を行うことを計画している。 本年度は、①特許書誌データベースの構築と、③消滅データベースの構築を行った。①については、研究着手以前に1910年から1945年までのデータベース化作業を完了していたことから、1910年以前の書誌情報をデータベースに加える作業を行い、第二次世界大戦以前の特許書誌データベースを完成させた。③については、公益財団法人京都技術科学センターから明治期以降の『特許公報』の寄贈を受け、巻末に掲載されている「彙報」の電子ファイル化(PDF化)ならびにテキストデータ化を行った。「彙報」には、特許の移転、消滅、審決、大審院判決、弁理士の登録、その他連絡事項が掲載されており、権利異動を知るためには必須の情報であるが、特許庁や独立行政法人工業所有権情報・研修館による特許情報電子化の過程では取り上げられず、Web上で特許情報を検索できる特許情報プラットフォームにおいても調べることができないので貴重な資料である。 ①と③の特許データベースより特許権者がどの程度権利を保持しようとしたのかを明らかにすることができ、技術市場理解の基礎となる企業や個人による特許制度の利用実態を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画通り年度初めに公益財団法人京都技術科学センターから明治期以降の『特許公報』の寄贈を受けることができ、「彙報」資料の保存とテキスト化に着手することができた。資料の分量は膨大であったが、①書誌データベース、③消滅データベースともに作成することができ、今後の研究計画を進める土台となった。
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今後の研究の推進方策 |
海外の学会やジャーナルでは特許価値の測定方法の一つとして特許の寿命(longevity)が用いられているが、資料の保存や公開条件が悪く日本特許を用いたものは限られている。構築した消滅データベースは欠落しているデータを補充するものであり、日本の技術市場や特許制度の役割を評価するうえで有用であると考えられる。研究成果を広く内外で報告し論文としても発表したい。また、計画通り移転データベースを作成を進め、日本の技術市場の発展について明らかにしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
消滅データベース作成にかかる「彙報」のテキスト化作業に関する費用が、当初の計画よりも若干低く抑えられた。これは、誤差である。 次年度においては同様の異動データベースの作成に用いる。
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