本研究は、第二次世界大戦以前の日本の技術市場を分析対象とし、内部技術市場の成長が技術市場の成長にどのような影響を与えたかについて、ミクロ的な視点から明らかにすることを目的としている。本年度は、全体計画のうちの③消滅データベースの構築を完成させた。昨年度においても、公益財団法人京都技術科学センターから寄贈を受けた『特許公報』の巻末に掲載されている「彙報」を用い、特許権の消滅に関する部分の電子ファイル化(PDF化)ならびにテキストデータ化を行ったが、本年度は1943年7月発行までの『特許公報』に掲載された消滅に関する情報のテキストデータ化を行った。1943年は第二次世界大戦中であるが、これ以降の『特許公報』には権利消滅情報が掲載されなくなり、実質的に戦前のすべての情報について(掲載されない期間も一定存在したが)データベース化を完了できたといえる。 昨年度構築した①特許書誌データベースと本年度完成させた③消滅データベースを結合させると、特許の存続期間が判明する。登録された権利を維持するためには毎年特許料の支払いが必要であり、有用な特許は長期間維持され、不要な特許は放棄されるため存続期間は短くなる。したがって、特許の存続期間は特許の価値を測る重要な指標となる。本年度には、戦前日本における特許の価値について個人/法人軸および産業軸でどのような分布をしているか分析を行い、国際学会および国内学会において報告を行った。また、特許の価値の分析を含む事例分析を行い論文として刊行した。
|