研究課題/領域番号 |
22K01606
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研究機関 | 甲南大学 |
研究代表者 |
永廣 顕 甲南大学, 経済学部, 教授 (70268514)
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研究分担者 |
佐藤 政則 麗澤大学, 経済学部, 教授 (10192600)
伊藤 真利子 東京成徳大学, 経営学部, 准教授 (40637138)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 預金部 / 郵便貯金 / 日本銀行 / 国債管理 / 金融統制 / 二元性 |
研究実績の概要 |
本年度においては、「研究実施計画」における第1年度の目標「預金部の資金運用の変化とそこでの国債運用の動機を究明し、預金部が国債の引受と購入・保有の両機能を果たし続けたことの意味を問う。」を中心に、第2年度の目標「全国金融統制会(日銀)と預金部との協働と軋轢の実態を検討し、戦時国債管理の二元性の再評価を試みる。」「戦時預貯金市場の変容と郵便貯金・郵便振替貯金の著増との関係を探求し、戦時国債管理を預貯金構造から捉え直す。」にも着手した。研究代表者(永廣)・研究代表者(佐藤・伊藤)・研究協力者(平山)は、日本金融学会歴史部会と日本金融学会2022年秋季大会金融史パネルで共同研究の成果を報告した。 研究代表者・永廣は、国債の引受主体、売買主体、保有主体として預金部が果たした機能に着目しつつ、1930年代後半までの預金部の資金運用のあり方の変化とそれにともなう国債運用の動機と実態について、預金部資金運用委員会での論議を中心に検討した。 研究分担者・佐藤は、日本銀行の企画委員会第二回特別委員会が日本銀行総裁あてに提出した意見書である「預金部ノ機能ニ関スル第二回特別委員会意見」を手掛かりに、全国金融統制会が稼働し始めた時点で、金融統制をめぐって何が問題になったのかを考察した。 研究分担者・伊藤は、預金部による国債の消化を可能とした、戦時期の貯蓄奨励の展開について検討し、貯蓄奨励の効果とその限界を明らかにすることを通じて、統制経済の下で物価政策と国債消化を連結した郵便貯金の意義と役割を考察した。 研究協力者・平山は、戦時期における預金部の国債ポートフォリオの変遷について検証し、日本銀行による国債引受からの視角からだけではなく、郵便貯金等の原資を活用した預金部の国債引受・保有機関としての実態に軸足を置いて、両者の関係性を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度においては、研究代表者・研究分担者・研究協力者各々が発掘・収集した資料の解析・活用により研究を進めた。また、毎月の研究会(対面またはオンラインによる開催)および研究合宿を通じて各々の研究成果を報告するとともに、研究内容についての討論を行い、研究の進捗状況の確認・調整を進めた。特に、コロナ感染問題が落ち着いてきたことにより移動が容易になり、対面での研究会・合宿を実施できたことにより、オンライン時よりも詳細な討論や進捗状況の確認・調整を進めることができた。 その結果、「研究実施計画」における第1年度の目標「預金部の資金運用の変化とそこでの国債運用の動機を究明し、預金部が国債の引受と購入・保有の両機能を果たし続けたことの意味を問う。」についてはおおむね達成することができ、第2年度の目標「全国金融統制会(日銀)と預金部との協働と軋轢の実態を検討し、戦時国債管理の二元性の再評価を試みる。」「戦時預貯金市場の変容と郵便貯金・郵便振替貯金の著増との関係を探求し、戦時国債管理を預貯金構造から捉え直す。」にも着手している。 これまでの研究成果については、「研究実績の概要」でも述べたように、日本金融学会歴史部会と日本金融学会2022年秋季大会金融史パネルで報告したが、現在は、Working Paperの形にまとめて本年6月末に公刊することを目標に、現在、各々が執筆に励んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
今後も「研究実施計画」における目標、特に、第2年度以降の目標「全国金融統制会(日銀)と預金部との協働と軋轢の実態を検討し、戦時国債管理の二元性の再評価を試みる。」「戦時預貯金市場の変容と郵便貯金・郵便振替貯金の著増との関係を探求し、戦時国債管理を預貯金構造から捉え直す。」の達成に向けて研究を進める。 同時に、第1年度の研究を通じて、国債引受に関わってきた預金部、日銀、シ団銀行の機能や重点は異なるのではないかとの問題関心が生じたことから、国債管理における預金部、日銀、シ団銀行の機能についても再検討する。 また、戦時期には郵便貯金とともに郵便振替貯金も著しく増加するが、そもそも、決済ができる郵便貯金に加えて振替(=決済)目的の貯金制度が必要とされたのはなぜかという根本的な疑問に対する研究史が存在しないことから、郵便振替貯金の実態についても解明する。 各々の研究成果については、第1年度と同様に、毎月の研究会(対面またはオンラインによる開催)および研究合宿を通じて報告し、討論および研究の進捗状況の確認・調整を進める。可能であれば、2024年度前半に日本金融学会や社会経済史学会の大会等で報告し、Working Paperの形にまとめて公刊したい。 なお、第2年度からは、研究協力者の平山を研究分担者とし、特に、資料・データの解析を強化する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ感染問題が落ち着いてきたことにより以前よりも移動が容易になったものの、勤務先大学でのオンライン授業やコロナ感染問題への対応に時間を取られ、必ずしも十分な研究時間を確保できる状況にはなかったため、特に、追加的な一次資料の発掘・収集および資料の整理が計画よりも進捗しなかった。その結果、研究代表者・研究分担者の「物品費」と「その他(主として複写費)」、研究代表者の「旅費(国内出張旅費)」の未使用が多くなってしまった。 次年度は、勤務先大学での授業は対面となり、コロナ感染問題への対応も緩和されることから、追加的な一次資料の調査・収集および資料整理のための時間が確保できると考えられ、その際には国内出張旅費を計上している「旅費」、複写費を計上している「その他」を使用することで対応する。
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