研究課題/領域番号 |
22K01619
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研究機関 | 大阪商業大学 |
研究代表者 |
加藤 慶一郎 大阪商業大学, 総合経営学部, 教授 (60267862)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 藩札 / 幕藩関係 / 年季継 / 勘定奉行 / 留守居 / 御用頼 / 長州藩 |
研究実績の概要 |
徳島藩・加賀藩・岡山藩・長州藩の4藩について、各々の主要史料保存機関において史料調査を実施した。徳島藩の藩政史料は(国文学研究資料館)、現時点では限定的であるとの印象を受けた。ただし、デジタルアーカイブとして公開されており、利便性が高く、適宜利用可能であることが分かった。 加賀藩(金沢市立玉川図書館近世史料館)は、藩政史料は利用可能であるが、同藩が藩札発行に積極的ではなかったこともあり、関連史料はさほど多くはないようである。ただし、他の東北北陸諸藩(秋田藩、弘前藩)において、同様に藩札発行に消極的な藩が散見されるので、地域差を考える上で重要な事例であると捉えている。 岡山藩(岡山県立記録資料館にて閲覧)については藩政史料自体は少なくないが、今のところ十分な関連史料は確認できていない。ただし、贋札作成者の処罰をを巡って、幕府との興味深い交渉が行われていたようなので、この一件について検討の価値があると考えている。 長州藩については、18世紀を中心に藩札発行の際の幕府との交渉内容が分かる史料が確認できている(山口県文書館)。藩札発行権の再申請ごとの対応が19世紀初頭までは、時期によって精度にばらつきがあるが、追跡できるとの見通しをもっている。 幕府の審査制度の究明を研究課題としているが、幕藩関係史の成果によると、非公式の事前交渉が大きな焦点になることが分かってきた。そのためには、現時点でもっとも詳細が判明する長州藩の事例を中心に検討を進めることが適切であると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
長州藩の藩政史料(山口県文書館所蔵)により、18世紀中の藩札再発行時の史料がある程度把握できており、幕府との交渉内容がある程度判明しつつある。 他方で、本研究と課題において一部重なる幕藩関係史について、いくつかの重要な成果に気づき、それらを学ぶことができた(藤田覚、深井雅海、山本英貴、荒木裕行の各氏の論考)。藩と幕府の職制などをより深く学び、分析の精度向上に努めたい。
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今後の研究の推進方策 |
まず、長州藩について、現在は19世紀初頭まで史料調査がある程度できている。今後は、時期を幕末まで分析を進めるとともに、より綿密な調査をおこないたい。 岡山藩、加賀藩、徳島藩についても、引き続き史料調査をおこない、幕藩交渉の実態解明に努めたい。 なお、自治体史の史料編などに、本研究課題に資する内容が見出される可能性がある。実際、彦根市史の史料編掲載史料は大変参考になるものであった。大藩の方が藩政史料が残されやすく、さらに幕藩交渉も熱が入っていたと考えられるので、該当する自治体史の点検を実施する。
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