研究課題/領域番号 |
22K01625
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
佐々木 将人 一橋大学, 大学院経営管理研究科, 准教授 (60515063)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 新規事業 / 競争優位性 / 両利き / 組織改革 / 分化 / 統合 |
研究実績の概要 |
2022度は、以下3つの方向で研究を進め、それぞれに一定の成果を得た。 ①文献研究:新規事業と全社的な変革の関係に関連する文献として主に両利き(ambidexterity)経営に関する研究のレビューを実施した。レビューの結果からは、新規の活動を行う上で、既存の知識の活用と新たな知識の探索を分ける必要や、その分け方に対する複数のタイプがあることが示されていたが、両者をどう結び付けるのかという統合的な観点において研究の蓄積が十分ではないことが示唆された。 ②組織の分化と統合に関する定量的な検証:入手可能なデータに基づいて、企業における新規事業創出組織の有無とイノベーションとの関係について定量的な検証を行なった。分析結果からは、様々なタイプの新規事業組織を持つことが、企業のイノベーション成果を高めること、組織的施策がその効果を高めることが示唆された。この組織的施策には、既存の組織と新規事業組織とを分化させるタイプの組織施策と両者を統合するタイプの組織施策の両方が重要であることが示唆された。 ③事例研究:スタートアップ企業を対象として新規事業から競争優位性の構築に至るプロセスについての研究およびケース執筆を実施した。ここでスタートアップ企業を対象としたのは、新規事業そのものの成長を考える上で、どのような要素や過程が必要かについてを明らかにするためである。今後、大企業のように多角化した中で行う場合との対比をするために予備的に採り上げた。分析結果からは、単一の事業による成長というよりもその過程で生じた補完的な活動を組み入れながら、段階的に競争優位性を構築する過程が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度の進捗としては順調に推移していると考えられる。文献研究と事例研究については、それぞれ一定の発見事実を得たという観点で順調に推移していると言える。また、定量研究について、本研究の目的と適合的なデータセットを入手することが出来たため、本研究が想定しているテーマや仮説に関連する定量的な検証が可能となったことは、研究の進捗に貢献していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、それぞれの研究方法について以下の方向で進めていく予定である。 ①文献研究については、両利き経営に関連する研究に加え、組織を統合するメカニズムについて、マクロ組織論の先行研究を検討していく予定である。 ②定量研究については、同一のデータセットを用いて、マルチレベルの分析を行っていく予定である。ここでは、イノベーション組織や統合的・分化的な組織施策があることが、どう個人のイノベーション行動や変革行動に対して影響を与えるのかという点について分析を行っていく予定である。 ③事例研究については、ケースとして扱う事例を増やし、定性的な検討を進めていく予定である。 また、①~③の成果については、投稿論文やケース等にまとめていく予定である。
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