研究課題/領域番号 |
22K01664
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研究機関 | 武蔵野大学 |
研究代表者 |
渡部 博志 武蔵野大学, 経営学部, 教授 (40612461)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | フォロワーシップ |
研究実績の概要 |
本研究は、事業組織における中間管理職に焦点を当てて、上司の下で組織目標に向けて取り組む際のフォロワーシップが、その部下に継承されていく条件について明らかにしようとするものである。 本研究を構想していた時点では、コロナ禍によってこれまでとは異なる働き方を余儀なくされ、上司と部下の接触機会そのものに変化が生じていると考えられた。そのため、部下にとっては、上司がさらに上の立場の人物に対して取るフォロワーシップ行動が「見えない」状況となることを予期していた。しかしながら、上記の研究目的にむけた予備的な事前調査として今年度(2022年度、本研究課題の初年度)実施した質問票調査からは、組織のマネジメントを任されている中間管理職の大半にとって、コロナ禍以前と比べて上司との接触機会の数では変化がほとんどなく、全体としてはむしろ増えていることが明らかになった。オンライン上での接触機会においては発言以外が見えなかったり、仕事の特性によって上司との関わり方に大きな変化が生じたりという可能性も考えられるのだけれども、上司のフォロワーシップ行動を部下が目にして真似て継いでいくという機会が失われたわけではないと考えられる。 また同調査からは、フォロワーシップ行動の中でも、上司の指示命令に従いながらも組織そのものに対しての貢献も意識する行動(松山(2016)における「能動的忠実型フォロワー」)が、組織に対する愛着的なコミットメントと統計的に有意な関係が見られないことも明らかになった。組織に対する愛着とは無関係に行われるフォロワーシップ行動が上司から部下へと継承されるとすれば、それはいかなる状況下で生じるものなのか等、現時点では論文等の形で研究成果を発表するに至っていないものの、フォロワーシップがその部下に継承されていく条件について今後の研究で分析を進めていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに研究代表者が取り組んできた中間管理職に焦点をあてた調査研究をもとに、組織内で上司から部下へとフォロワーシップ行動が継承されるか否かを検討するにあたっての予備的な質問票調査を実施することができた。 フォロワーシップとリーダーシップのいずれをも発揮する立場にある中間管理職は、上司のリーダーシップの下で自らはフォロワーとして組織目標に携わる側面がある。そこで予備的な事前調査ではリーダーシップとフォロワーシップの関係についても調査し、上司と部下の両者のフォロワーシップ行動を考察するにあたって所与となり得るリーダーシップについての分析にも取り組んでいる。また、コロナ禍を経て、実際の職場では上司と部下のコミュニケーション機会にどのような変化が生じたのかという基本的な実態を把握し、今後の研究を行う上で不可欠な準備は順調に進められていると考えている。 ただし現時点においてインタビュー調査については実施の可能性を探っている状況にあり、質的調査を並行して行うという点では当初の見込みよりは少し遅れが生じている。量的・質的両面から考察を加えられるよう進捗を管理する必要があるものの、研究全体としては概ね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度に実施した調査をもとに、質問票調査を中心に研究を推進する。 組織目標に向けて取り組む際のフォロワーシップ行動が上司から部下へと組織内で継承されるのかを主たる問いとして、質問票調査を通じて部下のフォロワーシップ行動に影響を及ぼす要因を分析していく。コロナ禍を経て働き方に変化が生じた中で、対面で上司の言動を見聞きする機会が減り、これまでは直接見えていた上司のフォロワーシップ行動が見えづらくなった可能性がある。その一方で、これまでの調査では、オンライン上で実施される会議等での同席機会が増えたという回答があることから、職場環境も考慮に入れた上で、上司のリーダーシップやフォロワーシップが部下のフォロワーシップ行動にどのように影響するのかを明らかにしていく。 また、質問票調査による量的研究のみからでは十分に捉えきれない部分を、インタビュー調査を行うことで捕捉する。フォロワーシップが発揮される文脈等をあわせて考察し、統計分析結果の解釈がより妥当なものとして、フォロワーシップの実態を深く理解することを試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
2022年度実施した質問票調査は、事前調査として内容を絞り込んだことで調査実施にかかる費用が予定よりも少額となった。このことが、残金が生じた理由の一つである。次年度以降の調査が有意義となるよう調査の実施を今年度の主たる研究活動とおき、調査実施費用の面で制約が生じないよう、調査実施以外の活動で費用が極力生じないようにしたため、結果として残金が生じた。次年度以降は、従前の執行計画に沿って助成金を活用させていただく予定である。
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