研究課題/領域番号 |
22K01693
|
研究機関 | 園田学園女子大学 |
研究代表者 |
呉 銀澤 園田学園女子大学, 経営学部, 教授 (30922728)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
|
キーワード | スマート製造 / ICTベーススマート製造戦略 / リーン生産ベーススマート製造戦略 / 東アジア製造企業 |
研究実績の概要 |
本研究は、どのようにスマート製造を推進すればよいのかというより実践的な問いに加え、産業・企業の状況に適用可能なスマート製造の発展モデルを構築することを目指してきた。 本計画の二年目にあたる本年度では、一年目の研究成果を踏まえながら、現場調査と分析を行い、その成果を積極的に公刊してきた。公刊した成果を中心に、本年度の研究実績の概要をまとめると、以下の通りである。 第一は、韓国、台湾、日本の中小企業の10社以上の「スマート製造」の実践動向を調査し、「デジタル化」と「スマート製造」に成功している企業に共通している諸特徴を、五つの実践ルールとしてまとめた。(雑誌論文参考) 第二は、本計画のテーマであるスマート製造の範囲が、工場内部からサプライチェーン・マネジメント全体へと広がりを見せている。それは製品開発、設計、製造のサプライチェーン全体の効率化を目指すデジタル化・スマート化の動向である。そこで、SCMの直面する不確実性の対応に関する先行理論を検討し、東アジアの半導体企業の幾つかの生産性指標を通じて、「不確実性」対応戦略を明らかにした。(学会報告論文参考) 第三は、東アジア製造企業の発展戦略の成果の公表である。それは第3国での日本と台湾企業間の戦略的提携の発展形態を技術的基礎と社会的条件の結合による発展形態を明らかにしたものである(国際ジャーナル論文参考)。 以上の研究成果は、スマート製造の実践形態を積み上げるものであり、本計画が目指す東アジア地域のスマート製造の発展戦略論の成果としての意義を持つ。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本計画は、大きく理論的研究と実証研究の二つの部分に分けられる。まず理論的研究の進捗程度については、一年目には、本計画が提示した実践的スマート製造の発展モデルの精緻化を行い、本年度では、先行研究と予備的調査によるスマート製造の理論パターンを導いた。それは、1)「ICTベースのスマート製造の発展形態」、2)「リーン生産ベースのスマート製造の発展」であり、その意味においては、計画は予定通りに進んでいる。 次に、実証研究の進捗については、本年度(2023年度)には、1年目の予備的調査の結果を踏まえ、スマート製造の成熟度の評価指標を開発し、理論パターンの検証のための現地調査によるデータの収集と分析を行ってきた。現地調査の進捗にいては、日本の精密打ち抜き加工企業に対して訪問調査を実施し(2023年8月)、生産現場のデジタル化、企業スマート製造戦略を中心に調査を行った。韓國企業については、2023年8月20日~28日にかけて自動車製造企業、自動車部品1次ベンダー、中小部品企業の訪問調査を行った。そこでは、ITインフラの条件、成熟程度、課題、スマート製造発展戦略を中心に調査した。台湾・中国については、対面調査ではなく、研究協力者の協力の下、工作機械機械メーカー(2023年10月)と部品加工企業(2024年1月)に対するメールとオンラインによるインタビュー調査を行った。関係者の来日の際、半導体企業のスマート製造とその戦略に関するインタビューをも行った。スマート製造の成熟度関連測定指標に沿ってスマート製造の実践程度とその動向を把握した。今まで、韓国・台湾・日本企業に対しては、順調に実証研究が進んでいるが、中国企業に対する調査は予定より遅れている。収集したデータ分析から実践パターンを導いているが、理論パターンと一致しない評価要素も見られることから、さらなる現地調査が求められる。
|
今後の研究の推進方策 |
理論研究については、概ね順調に進んであり、引き続き実践パターンとの照らし合わせによる理論構築を行う方向である。実証研究については、諸状況により実施できなかった企業もあり、より綿密な推進方策を練ることが求められている。そのために、まず今後(2024年度)は過去2年間の調査から既存理論パターンでは、新しい実践形態の可能性も見られたことから、日本・韓国・台湾の追加調査を推進していく方向である。台湾・中国企業については、現地企業の対応時期の関係上、本年度対面による現地調査ができなかったので、現地協力者の協力を得ながら、調査を行う方向である。特に、政治的・経済的不確実性が高まる中、中国現地調査が実施できなかったので、今後は、中国企業の調査が課題である。その課題に対して、対面調査が許されない場合は、オンラインによる調査も推進していく方向性である。また関係者が来日の際、調査する方向性も視野にいれながら準備していく予定である。さらには、日本滞在の中国研究者(研究協力者)との共同調査も推進していく方向性も考えている。 次に、論文公刊については、本年度欧米ジャーナルに公刊した研究成果の出版費用が相当高くなっているので、今後はオープンアクセス・ジャーナルに出版する方向性も考えるべきである。 最後に、限られた研究費の下での海外調査と関連して、円安による海外出張費の高騰による対策も考えるべきであり、その滞在期間を短くしたり、出来ればオンラインによる調査をも積極的に取り入れたりすることが求められている。 こうした課題と方策を踏まえて、本研究計画の目標達成に向けて、今後より徹底した事前準備を怠ることなく、進めて行っていきたい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
プリンターなどの物品購入の未使用、予定していた現地調査がオンライン形式になり、予定より使用金額が少なくなった。計画書に書いてある物品等を購入し、2次海外調査に使用する予定である。
|