研究課題/領域番号 |
22K01699
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
服部 泰宏 神戸大学, 経営学研究科, 教授 (70560150)
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研究分担者 |
矢寺 顕行 大阪産業大学, 経営学部, 教授 (20582521)
新井 康平 大阪公立大学, 経済学研究科, 准教授 (30550313)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 人事考課 / 組織内評判 / 統合的文献レビュー |
研究実績の概要 |
当該期間中に実施したのは、(1)人事考課や組織内の評判に関する文献のレビューと(2)株式会社島津製作所および中小企業A社における人事データとアンケート調査,及びインタビューの実施である。このうち(1)は、以降の経験的調査に先立って、検討するべき研究課題を明確にすること、(2)は、(1)をもとに構築されたモデルを定性的/定量的に検討することを意図したものである。 当初の研究実施計画に照らしていえば、この段階で、3つの研究課題のうちの1つ、具体的には「研究課題1: 上司による人事考課と周囲の社員による評判の相関,およびそれぞれの独立変数と従属変数を比較することを通じて,2種の評価の間の経験的な弁別性を明確にすること」までが、ひとまず終了したことになる。 分析の結果見えてきたのは、上記2社いずれにおいても、上司が行う人事考課と組織内の不特定多数の人によって形成される評判の間の相関は極めて低いこと、またそれぞれを規定する独立変数には共通する部分が一部みられるものの、基本的には別であるということであるということである。これらはつまり、少なくともこの2社において、人事考課と評判とは明らかに、異なった種類の個人を「優秀」と検出する装置であるということを意味する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度中の検討事項であった文献レビューは、予定通りほぼすべて終了し、その成果は「スター研究の展開と課題:統合的文献レビュー」として国内査読付き雑誌に掲載されている。また上記の通り、すべての期間を通じて検討する予定である3つの研究課題のうち、1つについて、ある程度確定的な回答を提示することができた。その成果は、「中小企業の中で創発する2種類の優秀さ: 人事考課と社内評判の弁別性」「社内の評判と人事考課:概念間の関係性と影響要因の探求」という2つの学術論文として発表することができた。このうち後者は、国内査読付き雑誌に掲載されている。 以上より、研究の進捗は概ね順調と言える。
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今後の研究の推進方策 |
残された研究課題は2つであり、それらについて1つずつ検討することが今後の研究活動となる。2022年度中に行ったのは、同時点における人事考課と組織内評判との相関関係の分析、およびそれらを共に従属変数とした場合の独立変数の異同の分析であった。2023年度においては、人事考課と組織内評判という複数の評価相互の影響関係を明らかにする。人事考課と組織内評判を複数時点で測定することにより、ある時点における評判が次の時点の人事考課を規定するといったように、組織の中の「優秀さ」を表す指標同士の関係性をより厳密に検討していく。それが終わった段階で、次に、それぞれの評価実践(人事考課と評判)において,人々がどのように他者への評価を行うのか,それは組織においてどのように共有されていくのか,そのメカニズムを解明する。これまでの研究とは異なり、ここからは多分に、定性的なアプローチを採用することになる。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入予定の書籍が所属先の図書館で閲覧可能であったため、若干の差額が生じている。
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