研究課題/領域番号 |
22K01701
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
野方 大輔 佐賀大学, 経済学部, 准教授 (20614621)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 役員構成 / 多様性 / 気候変動 |
研究実績の概要 |
日本企業は取締役会・監査役会の実効性確保のための前提条件としてジェンダーや国際性を含む多様性の確保が求められるようになった。このような社会的要請があるにもかかわらず、先進国のなかで日本の役員の多様性は低水準である。日本で多様な人材活用を進めるためには、多様化の成果を各事業者に見えるようにすることが必要であろう。 他方で日本では2050年までに温室効果ガスの排出をゼロにするという長期目標が掲げられ、社会的パフォーマンスへの注目が高まっている。ガバナンスコードでも気候変動を含む持続可能性に関する基本戦略策定を企業に要請している(補充原則2.3.1)。しかし、こうした要請は日本ではじまったばかりで、全社的理解や協同が不足しがちである。ここで、全社的な気候変動戦略・指針(気候変動問題に対するミッションおよびビジョン)が、全社的な協力得る上で重要になるはずである。この点について、女性や外国人役員の存在が、寄与する可能性がある。 日本のデータを用いた既存研究では、多様性と財務的パフォーマンスとの関係が分析されるが、われわれの知る限り、気候変動との関係は調査されていない。このギャップを埋めるため、日本のデータを用いて、役員の多様性が気候変動問題に対する全社的戦略(ミッションとビジョン)の形成にどのように影響するかを明らかにした。 分析結果は次のようにまとめられる。女性役員の存在は明確な気候変動ビジョンの策定と正の関係を有している。また、外国人役員の存在は気候変動ミッションの策定と正の関係を有している。女性および外国人メンバーによる戦略策定への潜在的な貢献を明らかにすることで、役員の多様性の効果を部分的に明らかにした。これは、多様性確保に懐疑的な日本企業にとって、役員構成を見直す材料となる可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
必要なデータベースの構築も概ね計画通りに進んでいる。また、本研究の予備的分析の結果は海外査読誌に投稿し、acceptされている。今後はモデルの精緻化、追加分析をおこなう。
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今後の研究の推進方策 |
内生性の問題への対応をおこなうべく、追加的なデータ取得と変数加工が必要である。データの契約先を増やし、アンケート、場合によってはハンドコレクト等により変数の追加を試みる。 また、社会的パフォーマンスの尺度を気候変動からさらに広げて人材の多様化の影響を検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウイルスの感染拡大により、学会参加が思うようにできず、分析枠組みやデータベースの構築に係る研究打ち合わせも最小限となり、九州圏の共同研究者と打合せをおこなうにとどまった。結果、旅費使用額が非常に少額となった。 これらの未使用分は、旅費やデータベース構築費に充当する予定である。
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