研究課題/領域番号 |
22K01707
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研究機関 | 専修大学 |
研究代表者 |
河藤 佳彦 専修大学, 経済学部, 教授 (40433156)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | コミュニティビジネス / 共通価値創造 / NPO法人 / 経済的価値創造 / 社会的価値創造 |
研究実績の概要 |
令和4年度においては、本研究の基本的で重要な拠り所となる理論体系について、文献レビューや資料調査による論点整理を重点的に実施した。併せて、関東地方においてコミュニティビジネス(またはその支援)、または地域経済活性化に取り組んでいるNPO法人に対してヒアリング調査を実施した。調査対象は、内閣府及び東京都のNPO法人データベースから抽出した14法人(全てNPO法人、2021年4月28日検索)である。この14法人について、活動実態を再精査した上でヒアリング調査への協力を依頼し、8法人から実際の調査協力を得ることができた。 これにより、令和4年度においては、本研究の基本的で重要な拠り所となる理論体系に関する論点整理、関係資料に基づく裏付け分析、さらにヒアリング調査の成果の一部を活用し、2本の研究ノート、1本の論文(査読付き)に取りまとめた。並行して、ヒアリング調査結果の整理を進めた。この作業については、令和5年度にも継続的に進める予定である。令和4年度の研究の到達点として、次のことが言える。 NPO法人による持続可能なコミュニティビジネスは、事業活動と収支構造の両面において実現が期待できる。一方で、事業の自立に重要な役割を担う安定的な財源の確保が求められる。地域課題の解決という公益目的の達成が必須要件として求められるコミュニティビジネスにおいて、自立性と継続性を実現する最も強力な財務基盤を提供するのは、共通価値を創造することができる独自の収益事業である。事業収益が公益目的と合致していることは重要である。同時に、多様な収入源を、当該法人の設立趣旨や目的に対応する組合せで確保することが求められる。合わせて、正規報酬待遇の職員や有償・無償ボランティアなど、多様な人材の効果的な確保も重要である。ただし、寄附金や補助金など不安定な財源に恒常的に依存することは避けるべきであろう。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和4年度における当初の研究実施計画は、次のとおりである。関東地方においてコミュニティビジネス(またはその支援)、または地域経済活性化に取り組んでいるNPO法人への、ヒアリング調査と結果の整理・分析を実施する。なお、ヒアリング調査の実施対象は、内閣府データを基本とし自治体データを合わせて精査し、14法人(全てNPO法人)を抽出した。 当初計画したヒアリング調査対象14法人のうち、実際にヒアリング調査が実施できたのは8法人であった。そのことは、調査対象としての適合性の再精査、相手方から任意の協力を得る必要があったことから、止むをえないと考える。しかし、ヒアリング調査が必要と考える全ての法人に対して調査への協力依頼を行い、協力が得られた法人に対して調査を実施することができた。そして、そこから多くの知見を得ることができた。ただし、ヒアリング調査を完了した8法人についての調査結果の整理は、令和4年度中に完了するこができず継続中である。 一方で、本研究の基本的で重要な理論体系に関する論点整理、及び関係資料や事例分析に基づく裏付け分析、ヒアリング調査結果のうち1件に係る整理は順調に進み、令和4年度内に、2本の研究ノート、およびこれら2件の研究ノートの成果を活かした1本の査読論文の完成にまで到達することができた。
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今後の研究の推進方策 |
計画年度の第一年度である令和4年度においては、本研究全体の基本的で重要な理論体系の整理、及び当初計画において予定したNPO法人へのヒアリング調査に係る協力依頼、および協力を得られた法人に対する調査は実施することができた。 令和5年度は、NPO法人へのヒアリング調査の結果の整理を引き続き進め、調査結果の分析までを早い時期に完了したい。また、令和5年度の研究計画である、関東地方の市区町村に対するアンケート調査を実施する。すなわち、関東地方の市区町村(316団体〔政令市5、市175、特別区23、町92、村21〕)に対して、アンケート調査を実施し(郵送方式)、コミュニティビジネスと連携した施策の有無、連携が有る場合の相手方や施策内容、成果や課題などについて問いたい。また、当初の研究計画の成果をさらに充実したものとするため、可能であれば、注目すべき事業に取り組んでいる自治体に対してヒアリング調査を実施し、その実施状況について掘り下げて把握したい。さらに、令和4年度から継続して実施するヒアリング調査の結果分析を進め、学会報告や論文作成に繋げたい。 令和6年度には、理論研究、実証研究(NPO法人へのヒアリング調査や自治体へのアンケート調査)の結果を総合し、学会などの場で報告したり、論文に取りまとめて学術論集に投稿するなどして、広く社会への成果還元を行いたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
ヒアリング調査を予定していた14のNPO法人のうち、再精査の結果、活動実態が乏しく調査対象から除外した法人、調査への協力依頼をしたが応じていただけなかった法人が計6法人あったことにより、次年度使用額が生じた。 次年度(令和5年度)に関東地方の市区町村に対するアンケート調査を予定していることから、この調査結果を踏まえ、注目すべき取組みを行っている自治体があれば、当該自治体に対する補完的なヒアリング調査の実施も検討したい。
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