• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2023 年度 実施状況報告書

計画と実行との乖離に関する心理学的研究

研究課題

研究課題/領域番号 22K01727
研究機関東京都立大学

研究代表者

長瀬 勝彦  東京都立大学, 経営学研究科, 教授 (70237519)

研究分担者 松井 亮太  山梨県立大学, 国際政策学部, 講師 (20897441)
研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2026-03-31
キーワード計画錯誤 / 意思決定 / 開梱効果
研究実績の概要

研究代表者の長瀬は、計画錯誤の削減に開梱(unpacking)が有効であるという多くの先行研究を踏まえて、複数の計画を立てることがある種の開梱効果をもたらす可能性があると予想し、一つの計画だけを立てる単一計画者と複数の計画を立てる複数計画者を比較する実証研究をおこなった。専門科目を履修する大学生に対して、第一段階として期末試験日の10日前にオンラインでの質問票Aを通知した。第二段階として、当該専門科目の期末試験の問題の末尾に質問票Bを設けた。有効回答数は122であった。結果は、複数科目計画者は単一科目計画者よりも短い計画勉強時間と短い実勉強時間、および全体としてはより詳しく当該科目部分はより簡素な計画内容で、単一科目計画者と同等の成果を達成した。これは複数科目計画者の方が勉強において効率的である可能性を示唆している。人や組織がプロジェクトの計画を立てるときに当該プロジェクトの計画だけを立てる代わりに、並行して取り組む他の課題の計画も同時に立てることによって、より短い作業時間でプロジェクトが完遂できる可能性がある。一方で、複数科目計画者は単一科目計画者よりも勉強時間において計画と実際との乖離が小さいという予測に反して、両者間に乖離の程度の差は見出されなかった。予測の正確性を増すという従来の意味での開梱効果が確認されたわけではないが、複数課題計画者は自分が抱える課題を広く見渡すことによって単一課題計画者よりも効率的に計画を遂行できる可能性があるという点で、この発見は開梱効果のマクロのレベルへの幾分かの拡張として位置づけることが可能であろう。
研究分担者の松井は、心理学的な視点から確率の認知に関する実験をおこない、その実験結果の一部を書籍『不合理な原子力の世界』で報告した。また、感情の観点から二重過程理論に関する英語論文を執筆して海外のジャーナルに投稿した(査読結果は未定)。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

本研究計画では実証研究の主要部分としては心理実験と心理学的な調査が計画されている。従来は主として学部の授業の受講生を参加者としてそれらをおこなっていたが、本年度は研究代表者が研究休暇を取得したために授業の担当がなく、多くの参加者を使った新しい実験ができなかった。文献調査については相当程度の論文と研究書を新たに入手して調査することができたが、必ずしも十分に整理できていない。

今後の研究の推進方策

本年度は本研究計画の実証研究の主要部分である心理実験と心理学的な調査を何回かおこなうことを計画している。担当する学部の授業の受講生らに協力を仰ぐことを予定している。特に計画と実行との乖離について、反省が一つの重要な要因として介在する可能性がこれまでの研究で示唆されたので、それについての追求などを展開していきたい。入手した文献の整理も引き続き進めたい。

次年度使用額が生じた理由

本研究計画では実証研究の主要部分としては心理実験と心理学的な調査が計画されている。従来は主として学部の授業の受講生を参加者としてそれらをおこなっていたが、本年度は研究代表者が研究休暇を取得したために授業の担当がなく、多くの参加者を使った新しい実験ができなかった。そのため、実験補助や実験協力者への謝金の支出が計画通りにできなかった。本年度は本研究計画の実証研究の主要部分である心理実験と心理学的な調査を何回かおこなうことを計画している。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2024 2023

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] 計画と開梱:単一課題計画と複数課題計画の比較2023

    • 著者名/発表者名
      長瀬勝彦
    • 雑誌名

      AAOS Transactions

      巻: 12 ページ: 28-39

    • DOI

      10.11207/aaostrans.2023-007

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 計画と開梱:複数事項計画は単一事項計画よりも高い成果をもたらすのか2023

    • 著者名/発表者名
      長瀬勝彦
    • 学会等名
      組織学会研究発表大会
  • [図書] 不合理な原子力の世界:行動科学と技術者倫理の視点で考える安全の新しい形2024

    • 著者名/発表者名
      松井 亮太、大場 恭子
    • 総ページ数
      288
    • 出版者
      五月書房新社
    • ISBN
      978-4-909542-59-5

URL: 

公開日: 2024-12-25  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi