研究課題/領域番号 |
22K01793
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研究機関 | 拓殖大学 |
研究代表者 |
李 燕 拓殖大学, 商学部, 准教授 (40612875)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | サステナビリティ経営 / マネジメント・コントロール / 制度理論 |
研究実績の概要 |
本研究では、サステナビリティ活動を行っている複数の企業組織に対する事例研究に基づいて、現代の企業組織に求められるサステナビリティ経営に対するマネジメント・コントロールの役割を明らかにすることを目的とする。本研究の2022年度の研究実績は以下のようになる。 まずは、2018年から2021年12月まで研究調査を実施してきた企業の事例(事例A)について、経営学の学術誌『組織科学』における「社会の変化、組織の変化」という題の特集号に、学術論文として掲載した。本稿では、制度的実践(institutional work)の理論を用いて、企業組織のCSRの在り方について分析したものである。同事例に関するもうひとつの研究実績は、「サステナビリティ経営におけるマネジメント・コントロールの役割」というテーマの学術論文の執筆であるが、現在管理会計学関連の学術誌に投稿中である。さらに、同事例に関しては、日本組織会計学会の研究会においても報告を行った。 次に、2020年9月から着手している、中小企業におけるサステナビリティ経営を支援するための会計専門家組織とのアクションリサーチ(事例B)については、2022年度、主に実務家の要請に合わせた活動を行いつつ、3回の実務家との打ち合わせによるデータ収集を行った。 最後に、2021年から着手しているソーシャルビジネスを展開している企業(事例C)に対しては、2022年度に11回のインタビュー、5回の参与観察を行い、データを収集した。また、その中間報告として、2022年度管理会計学会全国大会において研究報告を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、サステナビリティ活動を行っている複数の企業組織に対する事例研究に基づいて、現代の企業組織に求められるサステナビリティ経営に対するマネジメント・コントロールの役割を明らかにすることを目的とする。 2022年度は、当初の予定していた複数の企業組織に対して、インタビュー調査、実務家とのアクションリサーチ、参与観察などを行うことで、豊富なデータを入手することができた。また、その成果について、査読誌である『組織科学』に学術論文を掲載したほか、現在投稿中の学術論文も執筆することができた。また日本管理会計学会全国大会、日本組織会計学会研究会などにおいて報告を行うことができた。 これらの各々の研究成果は、「企業組織がどのように社会から求められるサステナビリティの要請に対応しつつ、企業組織としての目標を追求しているか」という共通の問いに対して、異なる業種や異なる組織形態、異なるビジネスモデルにおける複数の企業組織を対象としたものである。したがって、これらの研究を蓄積することで、今後サステナビリティ経営におけるマネジメント・コントロールに対する包括的な理解を形成し、企業組織におけるサステナビリティ経営の実務と理論に貢献するができると考えられる。以上のような理由から、2022年度の研究は当初の予定通りに順調に進んでいるといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究計画としては、引き続きデータ収集や国内外の学会において研究報告などを行い、そのフィードバックに基づいて、国内外の学術誌へ学術論文を投稿する予定である。2023年度は、事例Aについての現在投稿中の日本語の論文の査読対応を行い、掲載を目指したい。事例Bについては、2023年度に、管理会計学の学術誌『メルコ管理会計研究』に投稿する予定である。また事例Cについて、6月開催予定のEuropean Network for Research in Organisational & Accounting Change (ENROAC) 13th Conference、9月開催予定の第7回定性的管理会計研究ワークショップ(メルコ学術振興財団主催、英国Bristol大学で開催予定)に参加し、報告を行う予定である。これらの学会における報告のための英文原稿のフルペーパーは執筆済みであり、ENROACでの報告についてはすでに許可を得ており、定性的管理会計研究ワークショップにおける報告可能性も高い。これらの発表を経て、原稿について加筆修正を行い、2023年度中に学術論文としての投稿することを目指す。 また、データ収集については、複数の企業組織に対する研究着手時期が異なるために、それぞれに合わせて、インタビュー調査、参与観察、追加の質問調査などを継続的に行いたい。合わせて、サステナビリティに対する研究は、学際的なアプローチが求められている領域でもあり、管理会計、マネジメント・コントロール、経営学、組織理論や社会学等、関連分野の文献研究も継続的に行っていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末の精算処理が残っていたため、実質的には残額はなく、次年度に精算予定
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