研究課題/領域番号 |
22K01796
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
岡本 紀明 立教大学, 経営学部, 教授 (00433566)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 社会的インパクト / インパクト評価手法 / インパクト金融 / インパクト投資 / 金融化 |
研究実績の概要 |
2022年度は英国LSEを拠点に在外研究を行っていたこともあり、新たな企業の成果測定に関する世界的動向を把握し、研究に結び付けることを主な目的にした。その点に関して、まず企業の社会的インパクト測定に関する指標を網羅して調査して国際比較研究を行った。加えて、特に世界的ネットワークを有するSocial Value Internationalという団体に属するSocial Value UKが主催する社会的価値測定に関する実務家向け講習会に参加し、現地の社会的セクターで働く実務家がいかにしてそのような手法を身に付けて実践するかエスノグラフィックな研究を進めることができた。その講習会参加で得た知見をまとめた内容をグラスゴー大学のアダムスミス・ビジネススクールにおけるWards Accounting Seminarで報告する機会を得た(2022年9月)。20人近い教員及び大学院生が参加し、活発な質疑応答を経て有益なコメントを得た。また、特に日本におけるインパクト投資に関する制度化の現状を含めた研究を、イタリアのタオルミーナで開催された無形資産に関する学会で報告した。ほぼ同じ内容をCity University of Londonで開催されたIntersections of Finance and Societyという学会及び、2023年1月にニューカッスル大学で開催されたAlternative Accounting Europe Conferenceでも報告する機会を得た。これらの報告で得られたコメントに基づき研究論文を一本まとめたが、それは査読を経て、The Routledge Handbook of Green Financeを構成する一つの章として2023年に刊行される予定である。今後はこの研究をさらに発展させ、社会的インパクト測定に関する研究成果を発表していきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
在外研究中はLSEからオフィスを与えて頂き、社会的インパクトの世界的動向を調査することができた。その点は予想以上の進展と言えるが、その一方で英国外で主に活動するハーバード・ビジネススクール(HSB)のメンバーが推し進めるインパクト加重会計に関する調査研究はやや手薄になった。それでも国際学会における報告及び研究論文としても研究1年目から成果が出たので、「おおむね順調に進展している」と考える。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は、社会的インパクトの評価に関してより掘り下げて調査研究を進めるとともに、日本国内でそれがいかに浸透しているのか、またステークホルダーはそれをどう捉えているのかに焦点を絞り研究するつもりである。また、評価のフレームワークに関して国際的統合が進められているので、この点も念頭に具体的な測定手法についても比較検討を行う。またそれを裏付ける理論についても、LSEのAndrea Mennicken教授と共同研究体制を構築したので、どこかの段階で相談したいと考えている。インパクト会計の進展の根底には「社会性の定量化」の動きがあり、その点は会計の本質とも深く関連する。Mennicken教授は事物の定量化(quantification)に関する理論的・社会学的研究を精力的に行っているため、国際共同研究の話を具体的に進めていきたい。これまで(1年目)の研究の継続としては、Social Value Internationalに関するさらなる調査研究を進めて、一つの研究論文としてまとめてジャーナルに投稿したい。
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