研究課題/領域番号 |
22K01797
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
清水 信匡 早稲田大学, 商学学術院(経営管理研究科), 教授 (90216094)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 資本予算 / 設備投資 / 経済性評価技法 / 投資プロセス / インタビュー調査 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、投資の経済性評価技法が投資意思決定に利用され、正味現在価値法が最善の方法である、との通説を一度棚上げして、投資の経済性評価技法が現実の投資計画プロセスでどのように利用されどのように機能しているのかを経験的に明らかにすることである。 2022年度は、2021年度におこなった質問票調査(日本国内に本社をおく上場企業 1,492 社の経営企画部,経営戦略部,財務部,経理部の上級管理職に対して質問票を送付した)の結果を分析した。日本企業が採用している経済性評価技法の平均像とマネジメントプロセスの実態を整理する。まず,投資の過半を占めるのは設備投資であり(52.2%),その次に研究開発費(22.0%)となっており,上場企業の資本的支出の対象が,主に設備投資と研究開発に向けられていることが明らかになった。 さらに、本調査での回収期間法の採用率が過去の調査でもっとも低いことが明らかになった。2000 年以降の調査である吉田ほか(2009)が 82.8%,清水・田村(2010)が 91.8%と比較しても,本調査における 回収期間法の採用率は 30%以上低下している。ただし,先行研究では原価比較法による評価を質問項目に含めず,回収期間法、会計的利益率法、正味現在価値法、内部収益率法の採用有無を聞いているため,回答企業は原価比較法による評価を回収期間法として回答している可能性があり,そのことが本研究の調査との差異に繋がっている可能性がある点に留意する必要があるだろう。将来のキャッシュフローを考慮し理論的に優れているとされる 正味現在価値法の採用率は,吉田ほか(2009)が 37.3%,清水・田村(2010)が 34.0%と,それ以前の調査の 10%台から増加傾向にあったものの,本調査での採用率は34.5%と直近 10 年で増加せず,ほぼ横這いである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度におこなった質問票調査の分析できた。銀行OBへの融資の際の回収期間法の利用に関するインタビューができた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、経済性評価技法が投資意思決定に利用され、正味現在価値法が最善の方法である、とのミクロ経済学に基づいた通説を一度棚上げして、多様な経済性評価技法が現実の投資のマネジメントプロセス(投資の必要性の認識、投資案の作成・起案・審議・承認、投資の実行、投資の事後評価、投資設備の除却)でどのような役割を果たしているのかを会計の視点から実証的に明らかにすることである。1)どの経済性評価技法が投資の業績管理プロセスにおいてどのように利用されているのか(管理会計の視点)、(2)資金調達にあたって企業と資金調達先(銀行や証券会社)との間でどの経済性評価技法がどのように利用されているのか(財務会計の視点)、ということをインタビュー調査によって明らかにしていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年におこなった質問票調査の分析に重点を置いたために、インタビュー調査かかる支出が抑えられた。今後は、(1)どの経済性評価技法が投資の業績管理プロセスにおいてどのように利用されているのか(管理会計の視点)、(2)資金調達にあたって企業と資金調達先(銀行や証券会社)との間でどの経済性評価技法がどのように利用されているのか(財務会計の視点)、ということをインタビュー調査によってさらに明らかにしていきたい。
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