研究課題/領域番号 |
22K01823
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研究機関 | 京都産業大学 |
研究代表者 |
松下 真也 京都産業大学, 経営学部, 教授 (00771205)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 簿記 / 複式簿記 / 異常取引の検出 / CAAT / 商品売買益 / 売上総利益 / 商品勘定 / 財産法 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は複式簿記と単式簿記から構成される現代簿記システムが提供する情報が企業の競争優位性の構築に貢献することを明らかにすることにある。まず,1簿記システムが提供する情報と企業の収益性の内部要因との関係を分析する基礎研究として,仕訳データの意義を検討した。仕訳データは複式記入の相互参照性(相手勘定を特定できる性質)を有するが,当該性質は取引全体の貸借関係の構造的把握またはエッジ表現による一対一の貸借関係の把握に基づく異常検出を可能にし,企業の収益性の内部要因(内部統制等の組織内部のケイパビリティ)の管理に資するという意義を持つことを明らかにした論文の掲載が決定した(松下真也「仕訳データの現代的意義と課題―相互参照性による異常取引の検出に着目して―」『簿記研究』第6巻第2号)。 次に,2簿記システムによって把握される粗利益(商品売買益)情報が現実に利用されるかを検討する歴史的アプローチによる基礎研究として,生成直後の複式簿記とされるファロルフィ商会の記録と同時代の非複式簿記の記録とされるアルベルティ商会の記録を比較した。前者の記録では特定商品勘定を用いて粗利益が把握され,特定の商品販売事業の継続・非継続の意思決定が可能になる一方で,後者の記録ではいわゆる財産法による損益が把握され,当該意思決定は意識されていないことを明らかにした論文を公表した(松下真也「複式簿記による損益計算と取引意思決定の指針機能の検討」『會計』第205巻第2号,64-75頁)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究目的を達成するための先行研究レビューおよび理論研究は概ね順調に進行している。また,2023年度の成果は論文2本であった。 これらの実績より,本研究課題の進捗状況は「おおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
現代簿記システムが提供する情報が企業の競争優位性の構築に貢献することを明らかにするための調査(実態調査,歴史的資料の調査)をさらに進める。また,現在執筆中の論文が公表予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
簿記システムが把握する粗利益または取引利益が利用される環境要因を特定するための文献調査の範囲および実態調査のスケジュールに若干の変更があり,また,学会,研究会についてもオンラインで開催されるものがあったため。次年度使用額は実施予定の実態調査の参考図書・論文の購入に充てたいと考えている。
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