研究課題/領域番号 |
22K01832
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
茅野 恒秀 信州大学, 学術研究院人文科学系, 准教授 (70583540)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 六ヶ所村 / むつ小川原開発 / 核燃料サイクル施設問題 / 放射性廃棄物 / エネルギー政策 / 地域開発史 |
研究実績の概要 |
本研究の2年目となる2023年度は、以下の3つの取り組みを進展させた。 第1に、本研究期間初期におけるまとまった成果として、六ヶ所村の地域開発史を俯瞰し、近年の地域づくりに関する動向を含む村の全貌を把握できる論文を執筆し、刊行した(「「原子力半島」はいかにして形成されたか:下北半島・六ヶ所村の地域開発史と現在」茅野恒秀・青木聡子編『シリーズ 環境社会学講座 2 地域社会はエネルギーとどう向き合ってきたのか』(新泉社))。加えて、放射性廃棄物政策に関して蓄積した知見を基に、東京電力福島第一原発事故によってサイト外に生じた廃棄物政策に関して俯瞰的に解説する機会を得た。 第2に、六ヶ所村民の生活経験と国策への応答の経過に誰もが向きあい、今後の地域づくりについて指針を得るための知識基盤となる資料アーカイブの構築と公表に向けて、既収集資料群の精査を進めるとともに、現地調査を実施し新たに資料を収集した。現地調査は期間中3回実施した他、全期間中にわたって地方紙の記事データベースを作成している。とりわけ2023年は県知事選挙が行われたため、選挙期間中に現地調査を実施するなどの工夫を施した他、村内の農漁業関係者、医療従事者への聞きとり調査を実施することができた。また近年の村の動向として注目される地域資源の掘り起こしに関連して、木育施設の調査も実施した。本施設は一般に公開されているものではないため、貴重な機会となった。 第3に、エネルギー政策や土地政策だけでなく、本研究の方法的基盤をなすアクションリサーチを通じた地域社会への参与に関する環境社会学的見地からの論考の発信、ならびに学会発表や市民向け講演、論説執筆などのアウトリーチを9件実施することができた。あわせて新聞紙上へのコメントは5件対応した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究期間初期におけるまとまった成果を編著書という形で発信することができた。調査頻度は新型コロナウィルスの影響が色濃かった時期に比べて回復させることができており、進捗順の入れ替えはあれど、おおむね順調に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
当初設定のとおり、4つの取り組みを複層的に進める。第1に六ヶ所村民の生活経験と国策への応答の経過に誰もが向きあい、今後の地域づくりについて指針を得るための知識基盤となる資料アーカイブの構築。第2にむつ小川原開発と核燃料サイクル施設問題という射程を超えた、戦後開拓と農林漁業に着目した資料の収集・分析と当事者への調査による新たな資料の発掘。第3に、2003年に実施した住民意識調査の「20年後の再検証」と位置づける調査。第4に、資料アーカイブを基盤とした現地における社会組織や住民との共同的実践の展開。2024年度は研究期間の折り返しにあたるため、資料アーカイブの構築と公表に向けた道筋を明確なものとする。
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次年度使用額が生じた理由 |
調査初年度に新型コロナウィルスの影響を受けたため、現地調査の頻度および研究補助員の雇用日数を落とさざるを得ない状況となったこと、当初の研究実施内容の期間中での入れ替えを行ったことに起因する。この影響を単年度で回収することは現実的でなく、残る研究期間の中で緩和していくこととなる。2024年度は夏期に集中して資料アーカイブ作業を進捗させる計画を立てているため、当初の計画のとおり、旅費や研究補助員の謝金に支弁する。
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