研究課題/領域番号 |
22K01833
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
永谷 健 三重大学, 人文学部, 教授 (50273305)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 金銭観 / 経済エリート / 近代教育制度 |
研究実績の概要 |
本研究の初年度にあたる2022年度は、スタートアップとしての総合的な考察を行った。すなわち、近現代日本の金銭観や金銭作法の形成に大きな影響力を持った経済エリートの社会や文化における位置取りについてである。具体的には、日本の近代化に特徴的な階層の再編過程における彼らの階層的な位置取り、そして、彼らの文化的な影響力である。考察で明らかになった点は次の通りである。 1.彼らは殖産興業という国策の優等生であったが、その点と封建期由来の賤商意識のあいだの齟齬は、彼らの社会的な位置取りを不安定なものとした。そうした不安定さゆえに、多様な差異化の戦略が彼ら自身によって講じられた。彼らがいわば作為的に、また急ごしらえで生み出そうとしたエリートとしてのアイデンティティは、それらの差異化に依存していた。それは学問や学校世界に対する意図的な貶価、そして、既成の正統文化(封建期に由来する伝統文化)への接近によって支えられていた。 2.前者は「虚文」や「虚学」を排する思想の延長線上にあるが、明治期においては近代教育制度への懐疑がその内容となる。雨宮や渋沢、そしてその後の実業家たちが反学歴主義や高等教育不要論を唱えるのはその現れである。 3.後者にあっては、明治の前半期においてエリート文化を彼らが探索するなかで伝統文化をその核として採用したことである。 4.二つの差異化はプレモダンへの志向という特徴を共有している。彼らは革新性と反知性主義・伝統主義を持ち合わせる集団であった。この点は、日本の経済エリートのその後の社会的な位置取りに少なからず影響した。 5.経済エリートによる思想表明が近代教育制度への懐疑や伝統文化擁護に傾いていたことは、戦後日本の金銭観や金銭作法のあり方に大きな影響を与えたと推測される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在は戦後の金銭観や金銭作法に関わる資料の収集に力を入れており、収集作業は順調に進みつつある。ただし、研究期間の初年度ということもあり、研究成果はまだ充実していない。
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今後の研究の推進方策 |
当初予算に前年度からの繰り越し分が加わることで研究費を余裕をもって使用できることになったので、戦後日本の金銭観や金銭作法に関する資料の収集をまずは充実させる。とくに雑誌・新聞記事、金銭教育に携わる教育機関関係の資料、貯蓄動向・消費動向に関係する資料の収集に努める。また、中間的な研究成果を論文として公表したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)コロナ禍の余波と勤務大学内の改組企画の任に当たることにより、資料収集のための出張が十分には行えなかった。とくに日本の第二次世界大戦後における金銭観や金銭作法についての諸資料(とくに教育機関が所有するもの)の検索や収集に多くの時間を費やせなかった。 (使用計画)戦後日本の金銭観・金銭作法に関する諸資料をまとめて購入するとともに、教育機関が所有する資料を収集するための旅費を使用する予定である。
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