研究課題/領域番号 |
22K01838
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研究機関 | 高崎健康福祉大学 |
研究代表者 |
安達 正嗣 高崎健康福祉大学, 健康福祉学部, 教授 (20231938)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 社会学 / 介護 / 高齢者 / 相互作用 / 家族 / 社会老年学 |
研究実績の概要 |
2022年度は、本研究の初年度として研究全体の再検討をおこない、当該研究のテーマである「相互作用行為としての介護に関する社会学的研究」に関する研究のレビューをおこなった。近年の欧米社会における高齢者研究の顕著な方向性としては、プロダクティヴ・エイジング、さらにはジェロトランセンデンス(老年的超越)といった考え方に基づき、高齢者であることを肯定的にとらえ、高齢者を主体とした調査研究の増加傾向が明らかになった。日本社会においても、最近では高齢者に関する当事者研究として、高齢者の福祉サービスについての調査研究で利用者本位の意味を再考する論文、高齢に伴う障害を肯定的に受け入れながら、ケアプロセスにおける主体的・能動的な参加がケアを受け入れるための新たな役割の形成(要介護高齢期の社会化)が見受けられるようになっていることが明らかになった。しかしながら、高齢者を主体とした実証的な研究は日本ではごく少数で留まっており、依然として高齢者介護における大部分の既存研究においては、介護する側である家族・親族あるいは施設介護従事者などの負担感やストレス感が中心的な課題として取りあげられ、介護状況のなかで高齢者は主として一方的に介護を受ける客体的な存在として、研究対象から除外されている現状にあった。こうした文献研究を通じて、相互作用論・コミュニケーション論ならびに「個としての要介護高齢者」の視点から、高齢者介護を相互作用行為としてとらえる本研究の先駆的な意義が浮き彫りになったと言える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2022年度は、当該研究のテーマでもある「相互作用行為としての介護に関する社会学的研究」の研究概要ならびに文献研究によるレビュー論文を高崎健康福祉大学総合福祉研究所紀要『健康福祉研究』に特別寄稿として掲載予定であったが、2023年8月の締め切りに合わず、2023年度に掲載予定となった。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度には、2022年度の文献研究をふまえて、高齢者(できれば現在要介護の場合を含む)に対する質問紙調査を実施する予定である。想定している調査項目としては、属性(性別、年齢、仕事の有無、世帯構成など)高齢期の自己像のとらえ方(自己評価尺度)、家族像(扶養意識など)、介護観(とくに介護受容意識)、主観的幸福感、身体的・精神的健康観、家族役割経験の有無(介護経験、家事・育児経験など)、介護福祉の現状や介護保険に対する認識度と要望、高齢期の介護福祉教育への関心度などである。また、日本家族社会学会が実施している全国家族調査の高齢者データとの比較などができるように、共通の調査項目も含める予定にしている。
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次年度使用額が生じた理由 |
2023年度は、質問紙調査の実施を予定していることから、多額の資金が必要になる可能性がある。
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