研究課題/領域番号 |
22K01846
|
研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
久保 真人 同志社大学, 政策学部, 教授 (70205128)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | バーンアウト / COVID-19 / パンデミック / 医療機関 / 医療従事者 / 医師 / 看護師 / 人的資源管理 |
研究実績の概要 |
2020年初頭より世界的にCOVID-19の感染が拡大し、日本の医療現場は「医療崩壊」寸前と言われるほどひっ迫した状態に陥り、感染者のほとんどが自宅療養を強いられる事態となった。OECD(経済協力開発機構)の統計によれば、人口当たりの病院数、病床数では世界1、2を争う「医療先進国」と言われてきた日本の医療体制の混乱は、病床数などのハードウェアよりも、ハードウェアを運用する制度や人的資源管理に問題があると考えられる。2022年度は、医療現場における人的資源管理の実態とCOVID-19の感染拡大に伴う影響について文献をもとに海外と日本の比較検討をおこなった。 COVID-19の感染拡大が医療従事者に及ぼす影響についての文献調査では、医療従事者のバーンアウトについて海外では数多くの論文が公刊されていることがわかった。これらの文献を精査すると、バーンアウトの3つの症状のうち、情緒的消耗感と脱人格化はCOVID-19の感染拡大前後で得点が上昇していた(バーンアウトのリスクが高まっていた)ことを報告している研究が多かった。しかし、もう一つの症状である個人的達成感の低下では、感染拡大により物理的、心理的な労働負荷が高まっているにも関わらず、得点が低下する(個人的達成感が高まっている)ことを報告している論文が多くあった。この結果は、COVID-19の治療に関わっている医療従事者が、自らの仕事に誇りを感じ、社会からも高く評価されていることから、達成感を感じていたためであろうと推測できる。 日本国内の研究については、COVID-19の感染拡大が医療従事者に及ぼす影響についての研究は海外に比較すると少なく、ある程度の規模の調査結果を報告している文献は6つにとどまっていた。これらの文献では、(妥当性の高い指標で)感染拡大前後の比較をおこなっている文献はなかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2022年度は、文献調査により得られた知見をもとに医療関係者のインタビュー調査に進む予定であった。しかし、2022年度もCOVID-19の感染拡大がもたらした医療現場の厳戒態勢が継続されていたため、入院患者やその近親者以外の人が医療機関に立ち入ることが厳しく制限されていた。そのため、インタビュー調査を先延ばしせざるをえなかった。 上記の事情により、インタビュー調査を実施することはできなかったが、文献精査のための時間が増え、当初予定していなかった文献レビューをまとめることができた。
|
今後の研究の推進方策 |
2023年5月よりCOVID-19が「5類感染症」に変更されたことを受け、医療機関の訪問制限が緩和され、医療従事者を対象としたインタビュー調査を実施することが可能になると予想できる。インタビュー調査の対象地域としては、東京や大阪などの大都市と郊外地域それぞれで対象地域を選定する。特に「医療ひっ迫防止対策強化宣言」を発出した岐阜県や静岡県など、医療ひっ迫を経験した地域の状況についてデータ収集をおこないたい。この調査から、日本の医療機関の制度や人的資源管理などソフト面の問題点を抽出する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
2022年度にインタビュー調査が実施できなかったため、2023年度にその費用が繰り越しされた。
|