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2022 年度 実施状況報告書

ベトナム反戦運動と市民社会ネットワーク形成についての研究

研究課題

研究課題/領域番号 22K01873
研究機関呉工業高等専門学校

研究代表者

木原 滋哉  呉工業高等専門学校, 人文社会系分野, 嘱託教授 (20259922)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
キーワード社会運動ネットワーク / 市民社会 / ベトナム反戦運動 / 環境保護運動 / 反公害運動
研究実績の概要

1960年代の社会運動の中で「ベトナム反戦運動」は、中心的なイシューであった。まず第一に、反戦平和運動の担い手だけがベトナム反戦運動を担ったのではなく、反戦平和というイシューを担っていなかった社会運動もベトナム反戦運動にかかわった。また第二に、「ベトナム反戦」というシングルイシューを掲げて、はじめて社会運動にかかわった人びとも多数存在した。さらに第三に、1970年代にベトナム戦争が終結した後、ベトナム反戦運動にかかわった人びとのなかには、反戦平和運動を継続する人びともいれば、反公害運動や自然保護運動、国際連帯運動、日刊連帯運動、人権擁護運動などさまざまなイシューを担う社会運動へと分岐していった。
日本において反公害運動や自然保護運動が活発になったのも1960年代であった。例えば、自然保護運動については、各地の自然保護運動の担い手が、一堂に会して論議する「大会」が開催され、自然保護運動のノウハウ、情報を交換して、自然保護運動が活発になっていった。同時に、自然保護を共通のイシューとしながらも、例えば湿地保護など下位のイシューごとに集まる機会も増えていった。自然保護運動は、各地のさまざまな運動を結集するとともに、下位のイシューへと分化し発展していくという傾向を確認できる。
反戦平和運動にしろ、環境保護運動にしろ、他の社会運動とのネットワークのなかで存在している。それらのつながり、ネットワークがどのようなものなのか、類似したイシューごとのネットワークだけなのか、あるいは、異なるイシューを担う社会運動とのつながりはどれほど形成されているのか、そうした社会運動ネットワークのあり方は、日本の市民社会形成にどのような影響を与えているのか、これらの問題群については、今後さらに調査・検討しなければならない。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

本研究は、ベトナム反戦運動をはじめとする1960年代以降の社会運動のつながり、ネットワークの実態、その影響を明らかにすることである。ただし、2020年度は、新型コロナウイルス感染症の影響で、インタビューなどをほとんど実施できなかったために、ほぼ文献調査を通じて社会運動のネットワーク形成について検討するにとどまってしまった。
文献を検討するのかで、社会運動ネットワークには、シングルイシューを軸にした社会運動ネットワーク、複数のイシューを軸にした社会運動ネットワーク、地域に根ざした社会運動ネットワークを抽出することができるだろうという作業仮説を立てることができた。
シングルイシュー社会運動ネットワーク、複数イシュー社会運動ネットワーク、地域に根ざした社会運動ネットワークという社会運動ネットワークの類型を前提にして、社会運動ネットワークの形成、発展、分化を検討することによって、社会運動が活発だったとされている1960年代から今日に至る、日本における市民社会がどのようなものなのかを明らかにする作業は、今後の課題としたい。

今後の研究の推進方策

社会運動ネットワークの類型化(シングルイシュー社会運動ネットワーク、複数イシュー社会運動ネットワーク、地域に根ざした社会運動ネットワークという類型)の妥当性を検討しながらも、その類型を参照しながら、どのような社会運動ネットワークが形成されてきたかを検討することが、第一の研究課題となる。
そのうえで、社会運動の発展市民社会の発展が、社会運動ネットワークの形成、分化、発展によって、どのように影響されるのか、検討することになる。今年度は、文献の検討しかできなかったのであるが、今後は、必要に応じて、関係者へのインタビュー調査を実施していく予定である。
今年度のウチには、これまでの研究実績を踏まえて、ベトナム反戦運動における社会運動ネットワークの形成、発展、分化について、おおまかな見取り図を描くことができると確信している。

次年度使用額が生じた理由

本研究は、資料調査と聞き取り調査に基づいて社会運動ネットワークについて理解を深めることを目的としている。2022年度は、新型コロナウイルス感染症の影響を受けて、聞き取り調査の実施がためらわれる状況にあり、聞き取り調査については、まったく進捗させることができなかった。資料調査については、まずは手元にある既存の資料を精査することから始めたために、予算を使用するに至らなかった。2023年度に入り、新型コロナウイルスをめぐる状況がかなり改善したこともあるので、聞き取り調査を計画を立て直して、実施する計画である。

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公開日: 2023-12-25  

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