研究課題/領域番号 |
22K01874
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
五十嵐 泰正 筑波大学, 人文社会系, 教授 (80451673)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 道路利活用 / タクティカルアーバニズム / ほこみち制度 / ストリートミュージシャン |
研究実績の概要 |
研究計画初年度にあたる令和4年度は、上野地区においては、①コロナ禍における台東区上野地区の路上活用のあり方を総括するとともに、②仲町通りの道路利活用社会実験において東京大学都市デザイン研究室と協働してアクションリサーチを行い、③アメ横周辺と仲町通りという経緯と環境が全く異なる形で道路利活用がなされている上野内の2地区を比較する形で、台東区及び隣接区住民を対象とした路上利活用に係る意識調査(インターネット委託調査)を行った。このうち①については、関東都市学会春季大会のシンポジウムで報告し、令和4年度末に同学会の年報にて報告内容に大幅に加筆する形で論文化された。③については、日本都市学会にて報告するとともに、上野地区におけるまちづくりに係る会議体でも報告し、地域の経営者等からのフィードバックを得た。 もう1つのフィールドである千葉県柏市においては、ストリートミュージシャン登録制度や路上空間での音楽イベント運営に係るアクションリサーチを通して、ミュージシャン、柏市役所関係者、地域の地権者ほかさまざまなアクターの路上活用に係る認識についての知見を深めた。なかでもミュージシャンがいかに路上という場を捉え、そこに共同性を育む可能性があるのかについて、日本都市学会年報に共著論文を発表した。 ほか、タクティカルアーバニズムに関する国内外の文献や関連法令を批判的に検討し、都市計画分野の専門家との意見交換を密に行うことで、路上利活用という試みを社会学的に捉え直す思考を深めた。こうした学際的な対話の一端は、「新建築オンライン」にてオンライン記事化された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上野地区におけるアクションリサーチとしての路上利活用への取組み、およびそのレビューとしての意味合いのある計量調査は計画通りに実施できている。また、路上利活用の取組みおよび法整備は、コロナ禍中の3密回避という命題を契機に進展した背景を鑑み、コロナ禍における路上飲食への二極化された市民・メディアの評価についての考察を深めたことは、アフターコロナのまちづくりを考える上での重要なステップとなった。 また、ストリートミュージシャン活動が令和4年度中から活発になされていた柏市においては、予定通りの研究成果が得られた一方で、船橋市等では令和4年度はまだ音楽イベントなどが再開されていなかったため当初計画していた近隣市の事例との比較研究については、やや滞っている。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度は、前年度に行った台東区上野および千葉県柏市両地区での道路利活用に積極的に関与するアクションリサーチを継続し、関連するステークホルダーへの調査を進める。なかでも、前年度やや滞っていたストリートミュージシャンに係る近隣市の事例との比較検討に注力する。上野においては、前年度の仲町通りに加え、中央通りでも路上活用の社会実験が開始される見通しであり、より幅広い関連ステークホルダーを対象として質的調査を実施してゆく。 一方、令和5年度には、タクティカルアーバニズムの先行事例が豊富な海外都市における視察および実施団体での資料収集・分析を行う予定であり、行き先としては、ヤン・ゲールが公共空間の整備に携わり、ストリートアートやストリートミュージシャンの活動が、世界的にみても極めて活発なオーストラリアのメルボルンを予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和5年度にオーストラリアへの海外視察を検討しているが、現今の円安・原油高の情勢の中で渡航費及び滞在費が当初の令和5年度使用予定額では賄えない程度に高騰することが予期される。よって、オープンアクセス資料や図書館などを活用して、令和4年度中の研究資料購入に係るを意図的に抑制し、19万円程度の次年度使用額を繰越せしめた。
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