研究課題/領域番号 |
22K01878
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
竹内 里欧 京都大学, 教育学研究科, 准教授 (40566395)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 都市新中間層 / 比較 / 教育戦略 / 子ども / 家庭 / 佐々木邦 |
研究実績の概要 |
本研究は、大正・昭和初期の児童文学を、比較(時間的・空間的)の視点も含みつつ分析することにより、近代日本の都市新中間層家庭における人間形成・教育戦略について明らかにすることを目的とする。これまで、都市新中間層における理想的人間像形成にかんする研究を行ってきたがそれをふまえつつ、本研究では、都市新中間層家庭における人間形成と教育戦略というテーマに重点をおいて考察している。今年度の研究実績の概要について記す。今年度は1年目ということで、先行研究の検討と理論軸の設定、資料収集に重きをおいて活動を行った。成果は以下のようなものがある。まず、「都市新中間層文化の生成と佐々木邦――「私民」の「市民」化の可能性」(『『日本型』教育支援モデルの可能性(仮題)』高山敬太編、2023年、日・英語にて出版予定。原稿提出済み)について、関連する研究者と、比較(時間的・空間的)の観点から議論を重ね、調整を行った。 また、「第18講 朝ドラ――主婦層を支えたビルドゥングスロマン」(『昭和史講義 【戦後文化篇】(下)』筒井清忠編、2022年、筑摩書房)を執筆し、戦後日本社会においてモデルとされる家族像の変化を通時的に追うことが可能になった。また、現在、育児規範の変容についての原稿を執筆している(今年度刊行予定)。その他の活動としては、学会発表(「フィンランドのナショナリズム研究者アイラ・ケミライネン――「参入」をめぐるディレンマ──」第 73 回 関西社会学会大会、2022年5月28日)を行った。また、研究会での報告をふまえて報告書の執筆(「テクノクラート的「知」の淵源: 『渡邉洪基――衆智を集むるを第一とす』の書評」)を行った。そのほか、「Welcome to 社会学」というリレー講演会(京都大学アジア親密圏/公共圏教育研究センター主催)の運営・司会を行い、社会学の研究者間のネットワーク形成を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は1年目ということで、先行研究の検討と理論軸の設定、資料収集に重きをおいて活動を行った。国立国会図書館、京大図書館等相互利用等を用いて、資料収集を行った。また、就業構造や住宅にかんする統計資料の調査を行った。これらの作業により、新中間層の台頭の社会背景について、職業構造の変動、新しい家族モデルや子ども観の登場・普及、進学率の上昇の側面から検討を行った。また、論文執筆・調整等(「都市新中間層文化の生成と佐々木邦――「私民」の「市民」化の可能性」(『『日本型』教育支援モデルの可能性(仮題)』高山敬太編、2023年、日・英語にて出版予定。原稿提出済み)、「第18講 朝ドラ――主婦層を支えたビルドゥングスロマン」(『昭和史講義 【戦後文化篇】 (下)』筒井清忠編、2022年、筑摩書房)、現在執筆中の育児規範にかんする論文(今年度刊行予定)等)、学会発表(「フィンランドのナショナリズム研究者アイラ・ケミライネン――「参入」をめぐるディレンマ──」第 73 回 関西社会学会大会、2022年5月28日)、報告書原稿執筆(「テクノクラート的「知」の淵源: 『渡邉洪基――衆智を集むるを第一とす』(瀧井一博先生、2016年、ミネルヴァ書房)の書評」)などを行った。また、リレー講演会「Welcome to 社会学」の運営・司会等も行った。また、様々な研究会に参加し、文化社会学の理論や比較社会学の視点について、考察を深めた。以上のような活動を1年目として行った。進捗状況としてはおおむね順調である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、1.都市新中間層文化の社会的背景について、2.都市新中間層家庭における人間形成と教育戦略、3.比較(時間的・空間的)の視点からの都市新中間層文化の再検討という三つの分析を中心とする。1年目については、先行研究の検討と理論軸の設定、資料収集に重きをおいて活動を行うと同時に、学会発表、論文執筆などの成果をあげた(詳細については先述)。また、都市新中間層の台頭の社会的背景について、資料収集・分析作業を行った。2年目については、1年目の作業をふまえ、都市新中間層を題材とした児童文学および読者層の分析、比較の視点からの再検討、および、成果報告書第1稿の執筆を目指す。都市新中間層を題材とした児童文学および読者層について、1年目に資料を用いて検討作業を行った新中間層台頭の社会的背景をふまえつつ、特に教育戦略に焦点を定め分析する。資料については、明治学院大学、日本近代文学館、国立国会図書館、東京大学明治新聞雑誌文庫などにおもむき資料を補充する。特に、コロナ禍の間、思うようにできなかった移動をともなう活動(遠方の施設における資料収集・閲覧、研究会参加等)に、力を入れたい。分析の結果をまとめ、まず、国内の学会(「日本社会学会」等)で発表し、学術論文としてまとめる。また、日本の教育文化の特徴や歴史的変容、可能性や問題について比較の視点から検討している研究会など(日文研研究会、国際シンポジウム等)での報告や議論を考えている。これらにより、都市新中間層文化について、比較(日本の教育文化の普遍性/特殊性)の視点をもち検討することが可能となる。それらをもとに、成果報告書第1稿を執筆することを予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナにより出張が思うようにできなかったため、次年度使用額が生じた。次年度以降、出張旅費等にあてる予定である。
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