研究実績の概要 |
文献レビューの成果、日本と海外におけるインタビュー調査の成果をあげることができる。文献レビューにおいては、多様性、対等性、自発性という尺度に加えて、コ・プロダクション(CPと略す)のレベルとして、co-implementer, co-designer, initiatorのレベルで捉える理論的枠組みを発見することができた(W.H.Voorberg, 2015)。質的調査の指標として、また量的調査における日本のコ・プロダクション達成度を測る指標としてさらに検討していきたい。 日本では、沖縄県の高齢化が異なる複数の自治体を訪問して、公民館などの既存施設の存在がインフォーマルな助け合いの基盤形成に大きな影響を与えていること、高齢化率50%を超える限界集落ではボランティアを義務としてではなく、趣味活動の延長線上にとらえて発展させる可能性、などをコ・プロダクションの成功要素として抽出することができた。 英国では、CP先進地と言われているWales(Swansea)とScotland(Edinburgh, Glasgow) を3年ぶりの海外調査として訪問することができた。Walesでは、CP研究のエキスパートであるSwansea大学教授に会うことができ、2023年度インタビュー調査で協力をいただくこととなった。Scotlandでは、主としてボランティア活動を振興する4団体(7人)を訪問し、CPに関するパラダイムシフトの中核には、「専門職から見た課題」から「本人が何を大事と思っているか」への変化があることを確認できた。しかし、CPはミクロからマクロ、難民・就業・貧困などテーマが広範にわたる。この点、対象絞り込みの必要性が示唆されたと言える。さらに、成功要因としては「対等」「リスペクト」「タスク指示」などの仮説が、現段階で仮説的に抽出されている。
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