研究課題/領域番号 |
22K01895
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
谷本 奈穂 関西大学, 総合情報学部, 教授 (90351494)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 美容 / 身体 / 医療 / 整形 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は「医療化」が進展する社会において、美容を目的とする身体加工の社会的意味とそのメカニズムを明らかにすることである。医療が外見をめぐる 差別的な意識を促進してはいないかに留意しつつ、人々が美容整形に向かう要因と、逆に抑制される要因を突き止めようとするものである。 今年度は、研究実施計画では、国内におけるアンケート調査、インタビュー調査、海外調査準備を行う予定にしていた。昨年度のコロナ禍による若干の研究の遅れを取り戻すべく、次年度以降に行う予定のアンケート調査項目の検討、および中間成果を公表(総括的な論文執筆と国際発表)を行うことに努めた。 その過程で、がん治療を専門とする医師と知己となり、共同研究を行うこととなった。 アンケート調査項目の検討については、がん治療専門医師とともに、新たな調査を行うべくオンライン会議を3回行なった。がん患者に対するアンケートということで最新の注意を払う必要があり、入念な計画が必要となった。現在は、調査倫理の申請を行なっている段階である。こちらの調査は、来年度(進捗状況によっては再来年度)より開始する予定である。 中間成果を公表について、「美容の文化社会学」を『岩波講座 社会学12巻 文化・メディア』に著した。また「工夫対象としての身体のよそおい」を共著として『〈よそおい〉の心理学 サバイブ技法としての身体装飾』に寄稿した。そして、パリシテ大学にてHealth and Diseases in Modern and Contemporary East Asia A Dialogical Perspectiveに参加し、“The Reality of Cosmetic Surgery in Japan”の発表を行なった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
国内におけるアンケート調査、インタビュー調査の準備が、おおむね順調に進んでいる。特に、ルッキズム概念について深く考察する機会として、がん患者のアピアランス研究を、その専門医と議論できる機会を得て、共同で調査することが決まったことは、研究の大きな進展といえるだろう。 また、海外における身体や医療に関わるワークショプにも参加し、発表を行い、それらの研究者と情報交換を行うことができた。 以上から、研究は(当初の計画以上とまではいかないものの)おおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度、2023年度とも海外で発表・調査を行なってきたので、本年度はむしろ国内における調査に注力する。2023年度に準備を進めてきた、アンケート調査を実施する。一般的なウェブ調査に加えて、(現在、調整中であるが)アピアランス治療を行なったことのあるがん患者に対してのアンケートも行う予定である。ただし研究倫理の審査を通す必要があるので、共同研究者である専門医との議論と合意が必須となる。 またパンデミック状況が改善したので、インタビュー調査も再開する。こちらはすでにインフォーマントを得ているので、早めに実施する予定である。 それ以外に、雑誌や研究書も収集し、文献調査も継続する。 以上、アンケート調査、インタビュー調査、文献調査を通して、美容に向かわせる/抑制する社会的要因を調べ、その際にはルッキズムやエイジズムの問題にも焦点を当てることとする。
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次年度使用額が生じた理由 |
2023年度はおおむね順調に研究は進展したものの、2022年度はコロナウィルスによる社会的混乱が残っていたため実施予定だった研究ができず、その繰越金が残っていた。2023年度は、書籍に2つの論文を載せることと国際発表に予算を集中的に使用したので、繰越分相当はいまだ残ることとなった。社会的混乱の状況は、2024年には改善されると思われるため、前年度からの繰越予算はアンケートとインタビューに充てる。 またアンケートはできる限り二種類実施するつもりである(一般的なウェブ調査と、アピアランスケアを行なったがん患者への調査)。それ以外にも予定している研究は延期せず実施するように努めて、研究推進の遅れは生じないように心がけることとする。
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