研究課題/領域番号 |
22K01902
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
直野 章子 京都大学, 人文科学研究所, 准教授 (10404013)
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研究分担者 |
松田 忍 昭和女子大学, 生活機構研究科, 准教授 (00621070)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 社会運動 / 被爆者運動 / 集合的アイデンティティ / 戦後日本 |
研究実績の概要 |
本年度は、日本被団協の設立前史、設立直後、1950年代末から60年代前半、1970年代と、運動期を4つに区分して運動関連資料の調査と収集を行った。具体的には、①1952年夏以降、広島において原爆被害者の組織化を始動した「原爆被害者の会」関連の資料、②1955年に開催された原水爆禁止世界大会後の被爆者救援運動を通して各地で被害者が組織化されていく過程の資料、③日本被団協が結成された後、1950年代末から60年代半ばにかけて原水禁運動が分裂していく中で、組織的な危機に陥った日本被団協の運動関連資料、④日本原水協脱退後に独自の運動を模索し始めた70年代の運動関連資料である。これらの資料を基に、次の点を明らかにすることができた。 1.原爆被害者組織は、被爆地において医療と生活保障の要求を中心に掲げた小規模な互助団体として始まった。原水爆禁止運動との関わりを通して、原爆を生き延びた者としての使命感に目覚めた被害者らは、広島、長崎、愛媛、東京、福岡などで、地域の被害者の組織化に着手し、広島県と長崎県の被害者が中心となって、1956年に日本被団協を結成した。 2.原水爆禁止と原爆被害者への国家補償という二つの要求を掲げて始まった被団協運動は、1950年代末から60年代前半にかけて、激動する国際情勢のなか、原水禁運動分裂のあおりを受けながらも、日本原水協脱退後、70年代初めには独自の運動を組み立てていく。70年代初め以降、原爆被害者援護法制定にむけた大規模な立法運動に注力することになるが、体験を訴えると同時にベトナム戦争での米国の殺戮行為や核保有国の核実験に抗議するなど、被害者独自の原水禁運動にも取り組んでいくようになる。 また、日本被団協資料調査の中で、1960年代末から80年代初にかけての愛知県被団協のまとまった資料を発掘することができた。同時期の運動解明の一助となることが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
インタビュー調査を行う予定であったが、新型コロナウィルスの感染拡大のなか、対象者が高齢であることを勘案し、感染状況が落ち着くのを待つこととした。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は、日本被団協関連資料としては、主に1980年代の運動資料の調査・収集を行う。地域の被爆者組織関連の資料としては、東京、兵庫、沖縄の被団協運動資料の調査・収集を行う。また、運動関係者に対してインタビュー調査を行う。 被爆者運動と同時代に展開された社会運動として、消費者運動と戦争「未亡人」の援護要求運動を中心に、他の社会運動も含めて文献調査を行った上で、比較検討のために研究会を開催する。
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次年度使用額が生じた理由 |
インタビュー調査を行う予定であったが、新型コロナウィルスの感染拡大のなか、対象者が高齢であることを勘案して次年度以降の実施としたため、旅費の予算の執行が少額であった。2023年度は、感染状況をみながらではあるが、インタビュー調査を実施する予定である。
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