研究課題/領域番号 |
22K01951
|
研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
杉原 陽子 東京都立大学, 都市環境科学研究科, 教授 (80311405)
|
研究分担者 |
杉澤 秀博 桜美林大学, 大学院 国際学術研究科, 教授 (60201571)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | 民生委員 / 役割ストレス / セルフ・ネグレクト / 8050問題 / 支援者支援 |
研究実績の概要 |
2023年度は,前年度に実施した質的研究の結果を踏まえて民生委員に対する質問紙調査の内容を検討し,調査を実施した。具体的には,東京都内の全自治体(62区市町村)の経験年数が3~9年程度の民生児童委員全数(2140人)に対して,郵送法による質問紙調査を行った。年度末時点の回収数は1592票(回収率74.4%)であった。調査票の構成は,民生委員の活動状況,役割過重・役割曖昧・役割葛藤,達成感・やりがい・継続意欲,民生委員に対する情報的・情緒的・手段的支援の提供源と提供状況,孤立死事例への対応数,セルフ・ネグレクト事例及び8050問題の状況と対応・支援・課題,民生委員の基本属性と地域活動への参加状況等である。 調査の数値データは入力途中だが,自由記述から主に以下の状況を把握した。 (1)有職者の増加,対応困難事例の増加,町会・自治会の加入率の減少等により民生委員のなり手が減少しているが,なり手不足問題への対応として,無報酬ではなく活動や責任に相応の報酬を支払い,ボランティアというより「仕事」として位置づけること,町会・自治会等からの推薦者だけでなく,地域福祉に精通したNPO法人・団体等への委託も検討すること等,民生委員の選任に係る見直しを求める意見が多数あった。 (2)個人情報保護の制約が厳しくて活動しづらく,情報提供しても事例の転帰に関するフィードバックがないことが意欲低下につながるという意見が散見されたが,地域包括支援センターや社会福祉協議会等からの情報や支援が上記の不満を解消し,意欲の向上につながる傾向が見られた。 (3)セルフ・ネグレクトや8050問題の家庭の中には,小中学生の時から引きこもっている事例や,引きこもりの子供やセルフ・ネグレクト状態の人が複数人いる世帯が少なからずあり,若い時からの重層的支援,特に引きこもりとその背後にある問題への対応や支援の必要性が示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定通りに質問紙調査を年度内に実施し、想定以上に高い回収率を得ることができた。
|
今後の研究の推進方策 |
2024年度は,前年度に実施した質問紙調査の数値データ解析と自由記述の内容分析を進めるとともに,10年前に実施した都内の民生委員調査の結果と比較し,状況の経年変化を把握する。これらの分析により,主に下記の課題解明に取り組む。 (1)セルフ・ネグレクトや8050問題の実態,背景・要因,支援策,民生委員が感じる課題や必要とする支援を明らかにし,重層的支援を要する人々への地域における支援策や支援体制を考察する。 (2)民生委員の負担や困難,やりがい,継続意欲,周囲からのサポート等の関連性を分析し,地域住民による対人支援活動を支えるための方策を明らかにする。 (3)上記の結果と10年前に実施した調査結果との比較により,セルフ・ネグレクトや8050問題の状況と民生委員の状況の経年変化を明らかにし,現状に応じた対応策を考察する。 (4)自治体別もしくは社会人口学的特性に基づくエリア別に分けて「変化の地域差」を分析し,経年変化の要因を各地域の施策や社会環境の差異の観点から明らかにする。
|
次年度使用額が生じた理由 |
調査の回収率が予想よりも高く、回収期限を過ぎても調査票を返送してくださる人が多くいた。自由記述も想定以上にたくさん記載してくださる人が多くいた。これらの理由により、データ入力に想定以上に時間がかかったため、年度内の会計処理期限に間に合う数量のみデータ入力を専門業者に委託し、残りのデータ入力は翌年度に回すことにした。そのため、使用額に残額が生じた。この残額は、新年度早々に、残りのデータ入力の業者委託に使用する。
|