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2023 年度 実施状況報告書

障害者のパーソナルアシスタンス制度における意思決定支援形態の比較研究

研究課題

研究課題/領域番号 22K01993
研究機関同志社大学

研究代表者

鈴木 良  同志社大学, 社会学部, 教授 (90615056)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2027-03-31
キーワード日本 / 自立支援協議会方式 / 重度知的障害者 / 重度訪問介護 / アクションリサーチ
研究実績の概要

今年度は、日本のZ市のパーソナルアシスタンス制度に関わる調査研究の結果に依拠して、パーソナルアシスタンスの意思決定支援の成果と課題を明らかにした。具体的には重度知的障害者の入所施設から重度訪問介護を利用した一人暮らしへの移行がどのような意思決定支援の方法によって実現されるのかを明らかにした.
研究方法は、Z市の障害者自立支援協議会の地域生活移行プロジェクトを対象と、アクションリサーチ法を採用した.具体的には、強度行動障害のある重度知的障害者であるAさんの施設から重度訪問介護を活用した一人暮らしへの移行を行なったX市の障害者自立支援協議会の地域生活移行プロジェクトを調査対象とした. 私は、2022年2月に当プロジェクトの座長として就任し、まとめ役を担ってほしいとY事業所に依頼された.当プロジェクトの関係者の承諾を得た上でプロジェクトの成果や課題について調査しながら私は関与することになった.当プロジェクトは2024年2月に最終のプロジェクト会議を行なった。
調査方法としては、キーファーのアクション人類学の方法に依拠した。
この結果、第一に、移行支援のアクターとして、自立支援協議会方式が採用され、自己決定の尊重と障害者権利条約の理念を重視する価値が基盤にあることが分かった.第二に、本人支援として、1)同一の支援者が継続的に関わり、2)施設でのコミュニケーションの方法やライフスタイルを尊重し、3)地域のモノ/活動への移行を積極的に行い、4)非管理の対応が取られ、5)構造化との距離化が図られていた。第三に、地域生活の基盤整備として、1)住宅の確保と環境整備、2)協働による重度訪問介護の支給決定の交渉、3)漸進的引継ぎと非管理的支援の共有、4)家族支援、が行われていることが明らかになった.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

今年度は、第一に、前年度に引き続き、スウェーデンのパーソナルアシスタンス制度の意思決定支援の形態の特徴を整理分析し、出版のための準備を進めることができた。具体的には、1)対象者とニーズ、2)支給決定の方法(アセスメント、給付金の支払い)、3)サービス提供の担い手(組織の介在のあり方、家族によるパーソナルアシスタント、パーソナルアシスタントの雇用保障)、4)費用、という観点からスウェーデンのパーソナルアシスタンス制度の特徴と課題を整理した。これによって、日本の重度訪問介護制度を活用したパーソナルアシスタンス制度への提言内容を明らかにすることができた。
第二に、Z市で実施してきたアクションリサー法による研究成果を一定程度まとめることが可能になった。研究費を通して、参与観察記録やインタビュー調査のデータを文字起こしすることが可能になり、データの分析を効率的に実施することが可能になった。
アクションリサーチ法によるデータを整理・分析することを通して、日本の重度訪問介護制度を活用したパーソナルアシスタンス制度における一つの意思決定支援形態を明らかにすることが可能になった。
すなわち、本研究で示された自立支援協議会方式という意思決定支援形態は、スウェーデンのように組織関与型の支援形態でありながらも、地域の事業所や行政関係者が共に関与する新たな意思決定支援の形態であり、その特徴と課題を明らかにした点が重要である。重度知的障害者の重度訪問介護利用は全国的に数少ない先駆的取り組みであり、より良い支援を実現させる上で、行政と民間事業所が協働関係を形成することが一定程度の役割を果たすことが明らかになった。
このような研究成果を示すことができたため、(2)と評価した。

今後の研究の推進方策

次年度は、札幌市のパーソナルアシスタンス制度の歴史・制度・支援の実態についてインタビュー調査や文献調査の結果に依拠して、整理する予定である。札幌市は自治体として、全国に先駆けてダイレクトペイメントを活用したパーソナルアシスタンス制度を実施している。この研究成果を分析することを通して、自己管理型の意思決定支援の特徴と課題を明らかにしたいと考えている。
2025年度は、カナダのパーソナルアシスタンス制度の歴史・制度・支援の実態についてインタビュー調査や文献調査の結果に依拠して、整理する予定である。カナダも自己管理型の意思決定支援の形態を発展させており、とりわけ、ファシリテーターが関与した自己管理型の意思決定支援の形態について調査する予定である。
最終年度は、カナダ・スウェーデン・日本のパーソナルアシスタンス制度の国際比較を行い、研究の問いに対する解を明らかにしたいと考えている。

次年度使用額が生じた理由

大分県での重度訪問介護の利用者へのインタビューを予定していたが、利用者のご都合によりインタビューを実施することができなくなったため。次年度において当インタビューを実施する予定である。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2024 2023

すべて 雑誌論文 (1件) 図書 (2件)

  • [雑誌論文] 障害者権利条約第19条の総括所見を受けて ―自立生活および地域社会へのインクルージョンの実現に向けて―2023

    • 著者名/発表者名
      鈴木良
    • 雑誌名

      さぽーと

      巻: 794 ページ: 40-45

  • [図書] 障害者権利条約の初回対日審査 : 総括所見の分析2024

    • 著者名/発表者名
      長瀬 修、川島 聡、石川 准、杉山 有沙、飯野 由里子、関哉 直人、大胡田 誠、堀田 義太郎、新井 誠、桐原 尚之、鈴木 良、今川 奈緒、中川 純
    • 総ページ数
      262
    • 出版者
      法律文化社
    • ISBN
      978-4-589-04307-8
  • [図書] 障害学の展開2024

    • 著者名/発表者名
      障害学会20周年記念事業実行委員会
    • 総ページ数
      496
    • 出版者
      障害学会
    • ISBN
      978-4-7503-5721-8

URL: 

公開日: 2024-12-25  

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