研究課題/領域番号 |
22K01999
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研究機関 | 鹿児島国際大学 |
研究代表者 |
岩崎 房子 鹿児島国際大学, 福祉社会学部, 教授 (60352473)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 島嶼地域型互助 / プライマリ・ケア / 小規模多機能型居宅介護 |
研究実績の概要 |
本研究は、2018~2021年度に研究代表者として実施した「島嶼地域型互助を基盤とする地域包括ケアシステムの構築研究」をさらに発展させるものである。これまでの調査研究結果から、島嶼地域においては、限られた医療・介護資源のなかで“安心”の担保と“選択”の自由をいかに保障していくかが問われていることが指摘された。 このことを踏まえ本研究では、島嶼地域型互助システムの展開において“安心”の担保と“選択”の自由を保障するために、鹿児島県の過疎地域にある診療所と小規模多機能型居宅介護事業所が連携して取り組んでいるプライマリ・ケアの先行事例を調査し、①プライマリ・ケアの実践モデルの現状把握と、②医療・福祉・介護・保健と地域住民が共に連携支援するシステムとしてのプライマリ・ケアの構成要素および課題を分析し、③これらの結果を島嶼地域型互助に効果的に醸成させることによって、④住み慣れた地域で上手に老いていくことを支え、自らの持てる力で最期まで生きることが可能になる介護資源および介護互助(住民互助)強化型の新たな島嶼地域型互助システム開発への一助とすることを目的としている。 初年度である今年度は、先行事例の現地調査を行う予定であったが、感染予防の観点から計画を見合わせ、プライマリ・ケアに関する文献研究を行った。文献研究の成果は、人生の最終段階で受ける医療・介護について、本人と家族などの身近な人、医療従事者などが事前に繰り返し話し合う取り組みであるアドバンス・ケア・プランニング(ACP)についての論文発表を行った。また、これからの在宅医療の鍵となるプライマリ・ケアの動向および新たな役割として期待されている社会的処方を担うリンクワーカーについての論文発表予定(2023年7月発行)である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究初年度である本年度は、鹿児島県南九州市川辺町において、診療所医師と小規模多機能型居宅介護事業所が連携して取り組んでいるプライマリ・ケアの実践モデルの現状把握を行い、医療・福祉・介護・保健と地域住民が共に連携支援するシステムとしてのプライマリ・ケアの手法、構成要素および課題を明らかにする予定であったが、調査対象者が診療所医師および高齢者施設職員であるため、感染予防の観点から計画を見合わせた。そのため、研究の進度はやや遅れが生じている状況である。今年度は、プライマリ・ケアに関する情報収集および文献研究を行った。その成果は、論文(2023年3月)として発表しており、その他、今年度執筆済みの論文を書籍(共著:2023年7月)にて発表予定である。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は、今年度見合わせた、診療所医師と小規模多機能型居宅介護事業所が連携して取り組んでいるプライマリ・ケアの実践モデルの現状把握を行い、医療・福祉・介護・保健と地域住民が共に連携支援するシステムとしてのプライマリ・ケアの手法、構成要素および課題を明らかにしていく。その結果をもとに、島嶼地域にある大和村において、住み慣れた地域で自らの持てる力で最期まで生きることを可能にするための介護資源・介護互助(住民互助)の要素を抽出し、大和村が着手している地域支え合い活動の土壌に、介護強化型プライマリ・ケアの実践モデルをいかに構築できるかについて調査・評価を行う。なお、加計呂麻島・請島・与路島においては、島内の介護資源が少ないことから島外(瀬戸内町内)の福祉資源を掘り起こし、限られた医療・介護資源のなかで“安心”の担保と“選択”の自由の保障のための検討を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)現地調査の対象者が診療所医師や高齢者施設の職員、地域住民(高齢者等)であるため、感染予防の観点から計画を見合わせた。そのため、これらの研究調査にかかる予算執行を次年度に繰り越すことになった。 (使用計画)次年度使用額として積み残した予算については、今後のコロナウイルス感染者数の動向をみながら、使用の可否を検討していくこととなるが、現地調査・活動が可能な状況となれば、①プライマリ・ケア実践モデルの現状把握に伴う旅費・調査協力者謝金等、②地域住民の聞き取り調査に係る旅費、③大和村および瀬戸内町地域包括支援センター職員への聞き取り調査に伴う旅費・調査協力者謝金等に充当する予定である。
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