研究課題/領域番号 |
22K02035
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
井上 靖子 兵庫県立大学, 環境人間学部, 教授 (00331679)
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研究分担者 |
内田 勇人 兵庫県立大学, 環境人間学部, 教授 (50213442)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 児童養護施設 / ICT技術 / ボランティア / 心理社会的地域支援 / ポストコロナにおける臨床実践 |
研究実績の概要 |
本研究は、児童養護施設において、ICT(情報通信技術)の利用実態、ニーズ、利用状況や問題点を把握し、子ども達の養育環境の向上のための新しい方策として、ICT技術を活用した支援の在り方や課題を探究すること、また、オンラインの学習支援、動画を用いた行事等の支援などICT技術を活用したボランティア活動を開発的、試行的に実施し、子どもらの反応やそのプロセスを検証しながら、ポストコロナにおいて、児童養護施設におけるICT技術を活用した臨床実践の課題を明らかにすることを目的としている。2022年度は、児童養護施設におけるパソコン、スマートフォンやiPad利用実態や支援活動に関わる先行文献を収集し、その精査を行った。特に、パソコンがある一般家庭の高校生が85%あるのに対して、児童養護施設は54.2%にとどまっている(林,2016)。2022年度は、児童養護施設にパソコン等の備品を配布し、施設職員に対するICT技術に関する研修を行っているNPO法人ライツオン・チルドレン(東京都)にインタビュー調査を行った。インタビューの結果、子どもの将来における自立のためには、スマートフォンだけではなく、パソコンを使える能力やネットリテラシーを身につけることが重要であること、子どもや施設職員にも個人のアカウントを持ち、子どもの権利やプライバシー保護を配慮しつつ、ICT技術を生活に生かしていく必要があるが、そうしたICT技術を取り入れることへの意識が乏しい施設が少なくない。さらに、施設職員のICT技術に対する知識や技術が十分ではなく、NPO法人による研修も東京都に限定され、十分に行われていない。ICT技術を生かした支援活動を実践していくための施設の物理的、人的環境が十分でないことが課題として明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2022年度は、児童養護施設におけるICT技術を活用した支援の利用実態についての文献精査とNPO法人ライツオン・チルドレン(東京都)に対するインタビュー調査は実施できた。今後、近隣の児童養護施設に出向き、聴き取り調査を行ない、どのような現状や課題があるのかの検討をし、それをふまえた質問紙調査の作成にとりかかるところである。今年度、NPO法人に対する調査にとどまったのは、大学学部内の部局プロジェクト、基盤研究(B)の研究分担、大学内の特別研究プロジェクトの方に集中しなければならず、パソコンやスマートフォンなどの児童養護施設における実態や問題点の文献精査に十分な時間をとることができなかったためである。また、新型コロナ感染症流行による直接的な対面を制限する措置が次第に解除されるなかで、ICT技術を利用した支援の必要性が減ったために、対面によるボランティア活動のほうにエネルギーを傾注することになったことも研究が停滞した要因である。しかし、2023年度4月には、児童養護施設に出向き、聴き取り調査をするための準備をしており、2023年度には、2022年度の後半に計画していた全国的な調査で使用する質問紙調査の作成のためのインタビュー調査を実施して、遅れを取り戻す予定である。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は、近隣の児童養護施設に出かけて、パソコン、スマートフォンやiPadなどの端末の使用に関する聴き取り調査(施設内での利用状況、ルールや規則、トラブル、ICT技術を生かした支援活動へのニーズ等)を行い、どのような現状や課題があるのかを具体的に検討する。それらをふまえて近畿圏を中心としたより広範囲の児童養護施設(100箇所以上)を対象とした質問紙の作成を行う予定である。また、ICT技術を活用した学生ボランティア活動のニーズに対しては、それらを試行的、開発的に実践していく準備を行う。2024年度は、児童養護施設を対象とした質問紙調査の結果の分析や考察、ICT技術を活用した遊びや学習支援のボランティア活動等で見えてきた、ポストコロナにおけるICT技術を活用した臨床実践の課題やより良い在り方について、日本子ども虐待防止学会、日本心理臨床学会等で学会発表を行う。また、質問紙調査や臨床実践研究についての報告書を作成する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2022年度は、児童養護施設におけるICT技術を活用した支援の利用実態についての文献精査を行ったが、近隣の児童養護施設に出向き、聴き取り調査を行ったり、質問紙調査の作成や配布の作業に至らなかったためである。また、新型コロナ感染症流行による直接的な対面を制限する措置が次第に解除されるなかで、ICT技術を利用した支援の必要性が減ったために、対面によるボランティア活動のほうにエネルギーを傾注することになったことも研究が停滞した要因である。しかし、2023年度4月には、児童養護施設に出向き、聴き取り調査をするための準備をしており、2023年度には、2022年度の後半に計画していた広範囲の調査で使用する質問紙調査の作成やそれに伴う謝金等で経費を使用する予定である。
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