研究課題/領域番号 |
22K02073
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研究機関 | 淑徳大学 |
研究代表者 |
山口 光治 淑徳大学, 総合福祉学部, 教授 (90331579)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 高齢者虐待 / 養護者 / 養護者支援 / ソーシャルワーク / 虐待 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、養護者による高齢者虐待に対して、①対応後にどのような基準で各自治体が「虐待対応の終結」を判断しているか、そして、②虐待は終結したが残された養護者の生活課題に対し、どのように継続した支援が行われているのかを明らかにし、養護者に対し継続して一貫した支援が行われるために、ジェネラリスト・ソーシャルワークを理論的根拠に据えて、③実践現場の実態を踏まえたうえで継続的な養護者支援方法論とそれに取り組むためのシステムを検討し、新たな実践モデルを提示していくことにある。 そのために1年目は、まず、研究の推進母体でありアドバイザリーグループとして「養護者支援研究会」を設置し、行政や地域包括支援センターなどの高齢者虐待防止実践者、研究者、臨床心理士ら7名をメンバーとして参画を得、年3回開催した。 そして、①と②の現状を明らかにするために、令和4年度は「市区町村における養護者による高齢者虐待の終結に関する実態調査」を実施した。本調査は「養護者による高齢者虐待」の終結の判断と、終結後の継続的な高齢者と養護者の本人支援に関する実態と課題を明らかにすることを目的に、「令和2年度 全国調査:厚生労働省」の結果で「養護者による高齢者虐待の事実が認められた事例の件数」が600 件以上の8都府県の376市区町村を対象に、郵送による調査を実施した。 研究計画では、全市区町村(1,741)に対して調査を実施する予定であったが、予算的な課題や虐待対応の実績の多い自治体を対象にすることで得たいデータが得られやすいことを勘案し、サンプル調査とした。調査は2023年1月中旬から開始し、3月末日を締め切りに回答を依頼した。回答は、376市区町村のうち114件の回答があり、回答率は30.3%であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
自治体への調査の締め切りが年度末に至ったが、当初の計画のとおり進んでおり、おおむね順調である。
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今後の研究の推進方策 |
2023(令和5)年度も引き続き研究会を推進母体として、第一に、前年度実施した郵送による実態調査の集計と分析を行い、そこから見えてきた課題について学会等にて発表していく。これまで、養護者による虐待の終結の判断の現状や継続的な支援の状況、課題等の実態を明らかにした調査は行われておらず、結果の公表は意義のあることである。 第二に、実態調査に回答のあった市区町村の中から、終結の判断基準が明確であり、継続的な支援を積極的に取り組む自治体5か所を選定し、共同研究を実施する。自治体の選定後、事例研究への協力依頼に訪問し、趣旨を説明し、各自治体へ3~4回程度の訪問を行い、ヒアリング調査を行う予定である。この調査は、令和5年度から6年度に取り組む予定である。 第三に、事例研究調査の実施と並行しながら、郵送調査と事例研究調査から収集したデータを、研究会を通して分析し、「連続して一貫した養護者支援の方法とシステム」についての検討を行い、ジェネラリスト・ソーシャルワーク実践として養護者支援に取り組むための方法論とシステムについて、いくつかの実践モデル化を図っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
自治体調査を全数調査からサンプル調査へと変更したために郵送料が減ったことや、調査の締切を回収率を高めるために年度末まで延長したことにより、データの分析に係る経費を翌年度へと繰越すことが必要となったため。
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