研究課題/領域番号 |
22K02084
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
橋本 真紀 関西学院大学, 教育学部, 教授 (50368495)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 多様性の“Respect” / 多様性の「尊重」 / 地域子育て支援拠点事業 / Respect for diversity |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、日本の地域子育て支援拠点事業における多様性を “Respect”する従事者の働きと実践的意味を明らかにすることにある。2023年度は、子ども家庭福祉学領域における「多様性の尊重」と“Respect for diversity”につい概念分析を行った。 「多様性の尊重」については、CiNiiで抽出された44論文から「多様性の尊重」の意味内容について記述が認められた37論文を選定し、Rodgersの概念分析を用いて分析を行った。分析枠組みの先行要件、特性、帰結に関する記述を抽出したのち、記述内容をコード化し、内容の類似性からカテゴリーを生成した。結果、民族的文化多様性が顕在化したことを契機として社会における多様な差異への気づきが生じ、その多様性の維持や共生を希求することが重視されるに至ったこと(先行要件)、その経過において多様な属性が交差していることも考慮しながら、異なる他と交流し相互作用や相互理解を体現する「多様性の尊重」が社会的価値と捉えられるようになったこと(特性)、その(帰結)として、社会的崩壊に至るのか、共生・共存(互恵的社会)がもたらされるのかは、論者により異なることが把握された。 “Respect for diversity”については、SSCI,ERIC, SocINDEX,Googlescalarを用いて、“respect for diversity”と “childhood, childcare, Socialwork”(or)をキーワードとして1990~2024年の査読論文を検索し、重複論文を省き146論文が抽出された。146論文を通読し、“Respect for diversity”の意味内容に関連する記述が認められた71論文を分析対象とした。現在71論文を精読し、Rodgersの概念分析の分析枠組みに関連する記述を抽出している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の研究計画では、①“Respect for diversity”の意味内容についての見解を聴取し、実践的意味を検討する、②BelgiumのMPでのヒアリング調査から、多様性を“Respect”する実践事例におけるMP従事者の働きの構成要素を抽出し、実践モデルを生成、及び実践的意味を検討するとしていた。具体的な調査としては、2023年度にBelgiumでのヒアリング調査を予定していたが、実施できなかった。理由は、2022年に家族が他界したが、その影響により2023年には別の家族が入院から認知の低下、施設入所等による介護、自身も2022年に難病と診断されており、校務と介護、自身の体調回復を優先せざるを得ない状態が続いたためである。そのため、予定していたBelgiumでのヒアリング調査は、2024年度に延期せざるをえなかった。 ただし、2022年度の本報告で示した2023年度に予定していた多様性の「尊重」と“Respect for diversity”の概念分析については、結果に示すように順調に進んでいる。多様性の「尊重」についての分析は終了しており、“Respect for diversity”についても文献の検索、取集、精読、キーワードの抽出は終了し、現在は概念分析の段階にある。 以上から、本研究の段階を「やや遅れている」と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は、2023年度に行った多様性の「尊重」と“Respect for diversity”の概念分析を踏まえて、BelgiumのMeeting Place(MP)の研究者、実践者を対象としたヒアリング調査を実施する。 具体的には、①概念分析から捉えられた“Respect for diversity”の意味内容についての見解とその実践における意図や働きを聴取し、実践的意味を検討する、②BelgiumのMPでのヒアリング調査から、多様性を“Respect”する実践事例におけるMP従事者の働きの構成要素を抽出し、実践モデルを生成、及び実践的意味を検討する。MPの研究者については、8月に来日予定であり、ヒアリング調査についてすでに依頼し内諾を得ている。BelgiumのMPの実践者については、2025年2~3月に調査を予定している。研究代表者が2017年度に在外研究を行ったBelgiumにあるMPの8か所の中で、4~5か所に協力を得る。2017年からコロナ禍を経て状況が変化していることから、MP研究者が来日した際に、現状を踏まえながら調査対象を選定する。 ヒアリング調査の調査項目にいては、多様性の「尊重」と“Respect for diversity”の概念分析を踏まえて作成する。概念分析の結果からは、ひとりの人においても多様な属性が交差しているという指摘が確認されたことから、BelgiumのMP従事者は、 “diversity”(多様性)をどのように認識しているのか、“Respect for diversity”を体現するにあたって何を意図し、どのように働いかけるのか、その姿勢を維持するために必要なこと(研修など)を捉えたい。その結果をふまえ、本研究の目的である“Respect for diversity”の働きに関する実践モデルを生成する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2023年度は、当初の研究計画で実施予定であったBelgiumでのヒアリング調査が実施できなかった。2022年に家族が他界したが、その影響により2023年には別の家族が入院から認知の低下、施設入所等による介護、自身も2022年に難病と診断されており、校務と介護、自身の体調回復を優先せざるを得ない状態が続いたためである。 2024年度は、8月にBelgiumのMPの研究者へのヒアリング調査(日本で実施予定)、2月~3月にかけて、Belgiumでのヒアリング調査を実施する。そのため、Belgiumへの旅費、調査費用、通訳(オランダ語)等を計上する。また、継続して“Respect for diversity”の概念分析に取り組む。英語文献の意味内容にいて正確な理解が必要なため、重要文献の和訳、その他文献の和訳校正を翻訳者に依頼することからその謝金の費用も計上している。
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