研究課題/領域番号 |
22K02087
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研究機関 | 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所) |
研究代表者 |
清水 朋美 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所), 病院 第二診療部(研究所併任), 診療部長 (90336561)
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研究分担者 |
齋藤 崇志 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所), 研究所 障害福祉研究部, 研究員 (70922342)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 視覚障害 / 高齢者 / 介護保険 / 質的研究 / 混合研究法 |
研究実績の概要 |
高齢視覚障害者への介護サービス提供の実態(課題とその背景)を把握するため、1)インタビュー調査と2)アンケート調査を実施した。
1)インタビュー調査では、高齢視覚障害者に対する介護サービスや相談業務に従事している介護専門職6名と、高齢視覚障害者4名にインタビュー調査を行い、インタビュー内容の分析には、インタビュイーの逐語録に対する質的分析(演算的Thematic analysis)を用いた。その結果、「視覚障害に対する配慮の不十分さ」という課題と、その背景要因として、介護専門職が持つ視覚障害に関する情報や知識の要因(個人レベル)と、多職種連携や事業所の相対的不足など地域レベルで取り組む要因(地域レベル)が明らかとなった。2)アンケート調査では、1)で抽出された課題とその背景に対する介護専門職の認識を明らかにするため、オンラインアンケート調査を実施した。オンライン調査会社にモニター登録している者のなかから介護専門職(看護師、介護福祉士、ケアマネジャー、理学療法士、作業療法士)を対象者として絞り込み、アンケートへの回答を求めた。最終的に1011名から有効回答が得られた。記述統計を算出した結果、5-8割の対象者から、1)インタビュー調査で明らかとなった「課題」や「背景要因」の存在を否定する回答が得られた。
インタビュー調査とアンケート調査の内容を混合研究法の手法に則り比較検討した。その結果、高齢視覚障害者への介護サービスでは、視覚障害に対する不十分な配慮という課題が存在し、個人と地域レベルの背景要因の存在が考えられた。また、これらの課題やその背景要因に対する「無自覚性」という課題が介護専門職の間に存在すると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実施計画では、研究計画1年目に、実態調査としてインタビュー調査とアンケート調査を行うことを計画していた。当初の研究計画から下記の2点を変更することになったが、予定していたインタビュー調査とアンケート調査の両方を実施することができた。したがって、進捗状況を「概ね順調に進展している」と判断した。
変更点1:当初、アンケート調査を行った後にインタビュー調査を実施する計画であった。しかし、先にインタビュー調査(質的調査)を行い、その結果をアンケート調査(量的調査)で検証する研究デザインへ変更したため、インタビュー調査を先に実施することにした。 変更点2:当初、所沢市内の高齢者福祉施設で勤務する介護専門職を対象とした郵送アンケート調査を予定していた。しかし、関係者との協議を行い検討した結果、十分な回答率が得られない可能性が高いことが分かった。そのため、オンライン調査会社のサービスを利用し、オンライン調査を行う方針へ変更した。
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今後の研究の推進方策 |
研究実施計画に準じて研究を推進していく。具体的には、研究計画1年目で明らかとなった高齢視覚障害者への介護サービス提供の課題とその背景を踏まえ、介護専門職のための学習支援ツールの開発を行う。研究代表者が所属する国立障害者リハビリテーションセンター病院の視能訓練士等にも研究協力者として参加してもらい、学習支援ツールに盛り込む具体的な項目や内容を検討していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、令和4年度計画では、介護専門職が高齢視覚障害に提供する介護サービスの課題や問題点の実態を明らかにするため、介護専門職に対する量的アンケート調査と、介護専門職と高齢視覚障害者に対する質的インタビュー調査を行う計画であり、地域の関連施設を対象とした調査と、国立障害者リハビリテーションセンター病院眼科ロービジョンクリニックの患者を対象とした調査を予定していた。しかし、先に質的調査を行った結果、よりよい回答率を得るために、介護専門職に関してはオンライン調査に切り替えることにし、更に詳細な調査が必要な場合には、地域や職能団体ベースで介護専門職にアプローチを行い、調査を行うこととした。また、質的調査ならびに学会等についてもCOVID-19の影響のため、対面形式や集合形式で行えず、オンラインでの実施となることも多かった。令和5年度は学習支援ツールの開発を行うことであるが、昨今の半導体不足、物価高騰も影響し、パソコンならびに周辺機器の入手困難な時期が続き予定通りに揃えることができなかったため、これら一連の機器を充実させながらコンテンツ試作版を作成していく予定である。
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