研究課題/領域番号 |
22K02088
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
山元 涼子 弘前大学, 農学生命科学部, 助教 (50580429)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | NAFLD / NASH / ビタミンB6 |
研究実績の概要 |
非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)は世界中で増加している疾患であり、中でも重症型の非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)を発症すると肝硬変・肝がんのリスクが高まることが知られている。現在、予防・治療の第一選択の1つとして食生活の改善等があげられており、栄養素と病態発症との関連を明らかにすることは重要な課題である。 ビタミンB6は、動物性・植物性の食品ともに広く分布している栄養素であり、通常ほとんど欠乏はおこらないとされてきたが、NAFLD患者のビタミンB6の摂取が不足していることやビタミンB6の活性型であるPLPの血中濃度が低下していることが、最近少しずつ報告され始めてきている。このように現象論は報告されているものの、ビタミンB6の欠乏がNAFLD発症さらには病態の進行に寄与しているのか、それとも病態発症に伴いビタミンB6の要求量が増加し、結果として欠乏状態に至るのかは不明である。 上記のような背景から、今年度はビタミンB6の摂取不足に伴うNAFLD/NASH発症への影響を明らかにすることを目的に研究を進めた。今回は、ストレプトゾトシン(STZ)および高脂肪食(HFD)誘導性NAFLDマウスがNASHを発症する週齢に合わせてHFDまたはビタミンB6無添加HFD(HFD-B6)を雄性C57BL/6Jマウスに給餌し、解析を行った。その結果、HFD-B6群では血液中のPLP依存性酵素量がHFD群より低値を示し、ビタミンB6不足を誘導していることが確認された。しかしながら、予想に反し、肝臓の脂肪蓄積はHFD群よりも低値を示した。一方で、肝臓の病理所見の結果、STZ+HFD(NASH陽性)群と同様に小葉内炎症が確認された。今回の飼育条件ではビタミンB6不足によるNAFLDの発症は確認されなかったが、肝臓の炎症が確認されたことから、今後飼育期間を延長し、病態発症への影響を検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ビタミンB6摂取不足がNAFLD発症に及ぼす影響を解析していくことを計画し、予想に反する結果が得られたものの、おおよそ計画通りの研究を進めることができたため。
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今後の研究の推進方策 |
今回の投与期間では、ビタミンB6欠乏の所見および肝臓の軽度の炎症が確認できたが、脂肪肝発症には至らなかったため、今後餌の給餌期間を延長し、ビタミンB6不足の影響を検討していく。 また、既存のNAFLD/NASHモデルを用いて、病態の進行に伴う血中ビタミンB6の挙動解析を進めていき、ビタミンB6の摂取不足や血中濃度の変化と病態進展との関係を明らかにしていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
予想と反する結果が得られ、成果発表に至らなかったため、次年度使用額が生じた。 次年度への繰越金は、実験条件の再検討や成果発表資金として使用する。
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