研究課題/領域番号 |
22K02104
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研究機関 | 修文大学 |
研究代表者 |
伊藤 友子 (大矢友子) 修文大学, 健康栄養学部, 教授 (80329648)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | 精神疾患 / グリセルアルデヒド-3-リン酸脱水素酵素 / カルボニル化合物 / 翻訳後修飾 / ゲノムコピー数多型 |
研究実績の概要 |
今年度は、検体数を増やしたプロテオミクス解析の結果から、統合失調症患者の末梢血由来リンパ芽球様細胞(LCL)においてグリセルアルデヒド-3-リン酸脱水素酵素(GAPDH)の酵素活性低下とカルボニル化合物による修飾増加の有用性・妥当性の検証を行った。また、酵素活性低下のメカニズムを解析した。カルボニル化合物は、選択的にGAPDHの活性中心やその近傍およびNAD結合ドメインを修飾しその機能の低下に関与していることが示唆された。 一方、重症摂食障害患者において、高解像度アレイcomparative genomic hybridization(CGH)法を利用した検出により、神経発達症関連ゲノムコピー数多型(copy number variant: CNV)がその発症リスクに深く関与している可能性が示唆された。またさらに、遺伝子セット解析から、「シナプスシグナル伝達」を司る遺伝子セットに、患者CNVが有意に集積していることが判明した。よって、シナプスを介した神経細胞間の情報伝達機構の障害が病態形成に寄与している可能性が示唆された。これまでシナプス機能障害の関与を支持する遺伝学的な知見はほとんどなかった。疫学研究から、摂食障害患者やその家族では自閉スペクトラム症の併存率が有意に高く、摂食障害と神経発達症には共通の遺伝要因が存在することが示唆されている。得られた結果は、共通の遺伝要因としてCNVの関与を示している。今後、個体レベルでリスクバリアントがシナプス機能や神経回路に与える影響を明らかにすることが必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
統合失調症患者のLCLにおいて、GAPDHタンパク質発現レベル、その酵素活性、カルボニル化合物修飾の関連を評価できる段階に至った。また、摂食障害への神経発達症関連CNVとシナプス機能障害の関与が示唆され、病態との関連についてさらに詳細な検討ができると期待される。
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今後の研究の推進方策 |
LCL中のGAPDHタンパク質発現レベルとカルボニル化合物修飾の部位と形式について、LC-MS/MSを利用して測定したいと考えている。また、各種ストレスに対するLCLの応答を解析する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
既存の設備や試薬を有効に活用することができたため次年度の使用額が生じた。次年度使用研究費の多くは、物品費が占める。
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