研究課題/領域番号 |
22K02119
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研究機関 | 大分県立看護科学大学 |
研究代表者 |
定金 香里 大分県立看護科学大学, 看護学部, 准教授 (20322381)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | アレルギー性喘息 / フラボノイド / ヘスペリジン / ナリルチン / 複合摂取 / 抗アレルギー作用 |
研究実績の概要 |
柑橘果皮には抗アレルギー作用があり、その作用を利活用した機能性飲料も開発されている。この抗アレルギー作用は、柑橘果皮に含まれるフラボノイドの作用であると考えられている。ナリルチンとヘスペリジンは、ユズ果皮に多く含まれるフラボノイドで、それぞれ抗アレルギー作用が認められているが、両フラボノイドの同時摂取による影響については調べられてなかった。そこで本研究では、ナリルチンとヘスペリジンを同時に摂取させたアレルギー性喘息モデルマウスの病態を、それぞれ単独で摂取させたマウスの病態と比較し、その効果について検討した。 卵白アルブミン誘発性アレルギー性喘息モデルマウス(BALB/c系、雄)にナリルチンを150 μg、ヘスペリジンを75 μg、計12回、経口投与した。両方を投与するマウスには、ナリルチンとヘスペリジンをそれぞれ、50 μgと25 μg(同時投与 低用量群)、または150 μgと75 μg(同時投与 高用量群)とした。 マウスの気管支肺胞洗浄液中の好酸球数、Th2細胞が産生するIL-5、IL-13量を測定した結果、同時投与と単独投与との間に差はみられなかった。Th2細胞と好酸球はアレルギー性喘息を含むⅠ型アレルギーの中心的役割を果たす細胞であることから、同時投与によるI型アレルギーの抑制増強は起こりにくいと考えられた。一方、アレルギー性炎症を増悪する好中球数は、同時投与 高用量群で、有意な差ではなかったものの低下する傾向がみられた。また、好中球の遊走、活性化に関わるケモカイン量も、同時投与 高用量群が最も低い値を示した。 これらの結果から、ナリルチンとヘスペリジンの複合摂取は、相乗的な効果ではなかったものの、好中球による炎症を抑える可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定通り、ヘスペリジンとナリルチンの2種類のフラボノイドを、アレルギー性気道炎症を誘発したモデルマウスに同時に曝露し、病態に及ぼす影響を検討した。モデルマウスの作成および採取した生体サンプルの解析も終了し、結果を得たため、おおむね順調に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
ユズ果皮飲料は通常、フラボノイドの苦味、柑橘果汁の酸味を軽減し、飲みやすくするため、加糖されている。一方で、最近、ショ糖が好酸球の脱顆粒を促進し、アレルギーを悪化させるという先行研究が報告された。このことから、加糖によってフラボノイドによる抗アレルギー作用を相殺される可能性が示唆される。そこで、フラボノイドとショ糖を同時に経口投与し、フラボノイドの抗アレルギー作用がショ糖によって阻害されるか、モデル動物を用いて検証する。初年度の実験結果から、両フラボノイドの同時摂取では、抗アレルギー作用は相乗的ではなく相加的に現れた。そこで、当初計画では、ナリルチンとヘスペリジンの混合溶液にショ糖を添加する予定であったが、フラボノイドを混合せず、それぞれのフラボノイドに対するショ糖溶液の影響について検討することとした。
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次年度使用額が生じた理由 |
マウスに投与する予定だった試薬の価格が計画時よりも高騰し、より安価なメーカーの同等品を選択したり、動物数を減らしたりして調整した。その結果、最終的に余剰金が生じた。次年度は、当初計画より実験群を増加し、動物数や試薬使用量が増加する予定なので、余剰金を利用する。
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