研究実績の概要 |
還元剤と浸透促進剤を添加して、緑茶抽出物やアントシアニンで処理すると染色性が向上した。これは、毛髪の物理化学的な構造を変化させることで、緑茶抽出物に含まれるカテキン類やアントシアニンの浸透拡散のしやすさを促すことが目的である。そこで、それらの物質が毛髪に対して化学的な影響がないかをFT-IR法により調査することを試みた。ATR法により、毛髪表面のFT-IRスペクトル測定をおこない、還元剤等の添加の有無で処理後の毛髪表面のスペクトル変化を調べた。しかし、明瞭な差異が検出されなかった。還元剤等が毛髪自身に“大きな”影響を与えなかった可能性もあるが、明確な根拠は見いだせていない。 また、前年度に試みたアントシアニンとポリフェノールの組み合わせの白髪染めについて、別のアントシアニンを利用して染色試験をおこなった。その結果、前年度のムラサキイモ色素と同様にブドウ果皮色素やアカダイコン色素においてもポリフェノールの後処理濃色効果や還元剤や浸透促進剤による染色性向上効果が見出された。 一方、毛髪の物理化学構造は水に漬けただけでも変化があり、それに伴い、物質の浸透拡散のしやすさも変化する。そこで、水に漬ける等の簡単な処理で物質の浸透拡散のしやすさが変化しない被染色物を染色することを試みた。その被染色物は、アノード酸化処理をおこなったアルミニウム板であり、毛髪と同様に酸性染料で染色しやすく、等電点がちかい(毛髪が5程度で、アノード酸化アルミニウムは6程度)。酸化染毛剤の染色メカニズムを参考に、ドーパ(L-3,4-dihydroxyphenylalanine)が酸化によって酸化重合し、メラニン色素となる化学変化を染色に利用した。その結果、メラニン合成後に染色するより、ドーパの酸化反応溶液でアノード酸化アルミニウムを染色する方が染色性が高いことがわかった。その他染色条件と染色性の関係を種々調査した。
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