研究課題/領域番号 |
22K02131
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研究機関 | 地方独立行政法人 大阪健康安全基盤研究所 |
研究代表者 |
中村 寛海 地方独立行政法人 大阪健康安全基盤研究所, 微生物部, 主幹研究員 (00332445)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | Campylobacer / バイオフィルム / mP-BIT / MLST / ST |
研究実績の概要 |
2011~20年に199事例から分離された660株の患者由来C.jejuniおよびC. coliについて、mP-BIT法による型別を実施した。mP-BITの結果は対象とする19遺伝子の保有の有無に基づき任意にタイプ番号を付与した。その結果、660株のC. jejuniは101タイプ(J-001~J-101)、107株のC.coliは14タイプ(C-001~C-014)に分類された。これらのうち、主要なタイプはJ-27(146株)、J-35(35株)およびJ-72(34株)であった。宿主適応域の広いC. jejuni菌株は病原性が高く、またバイオフィルム(BF)形成性が高いことが報告されていることから、J-27 10株、J-35 7株、J-72 7株およびこれら以外のタイプ20株計44株を用いてBF形成試験を実施した。また、これらのうち41株についてWGS解析を実施し、MLSTに基づくST型を決定した。BF形成試験は既報に従い、菌液を接種した24穴プレートを48時間培養した後に培養液を捨てて乾燥させ、0.1%クリスタルバイオレット(CV)水溶液で染色してOD570値を測定し、これを形成されたBF量として定量した。ST型別の結果、MLSTのSTとmP-BIT型別結果が相関する傾向が見られ、J-27はST-22(CC-22)、J-35はST-4526(CC-21)、J-72はST52と相関した。BF形成試験の結果、J-27はJ-35およびJ-72に比べてBF形成量が低く、環境適応性が低い可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
カンピロバクターのバイオフィルム形成試験法を確立し、44株のC. jejuniについてデータが得られ、それらのうち41株についてWGS解析を実施できたものの、R4年度は研究所の移転があり、さらに菌株数を増やして解析することができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
2011~2020年までの食中毒患者由来株でmP-BIT型別未実施の株についてDNA抽出を行い、mP-BIT型別を実施するとともに、バイオフィルム形成試験を実施し、WGS解析を行う。2020、2021年に分離された鶏肉由来株についても同様にmP-BIT型別とバイオフィルム形成試験、WGS解析を実施する。バイオフィルム形成性に違いが見られた株について、WGSデータから環境適応に関連する遺伝子群の比較解析を実施する。また、wgMLSTにより菌株間の関連性を調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和3年度で終了予定であったカンピロバクターに関する科研費を1年延長し、令和4年度も継続して研究を実施することになった。また、R4年度より文部科研費以外で新たにカンピロバクターに関する研究分担を行うことになったため、R4年度は使用できる研究費が予想以上に多くなった。それらの研究費を優先的に使用したことにより本研究課題でR4年度に使用予定であった研究費に残額が生じた。それに加えて研究所移転のため、実験が計画通りに進まず、思うように予算が執行できなかった。
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