研究課題/領域番号 |
22K02144
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
中村 卓 明治大学, 農学部, 専任教授 (30328968)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | プラントベースフード / ヨーグルト / 食感デザイン / おいしさ / 官能評価 / 構造観察 / 物性測定 / テクスチャー |
研究実績の概要 |
本研究は、おいしい食感をデザインするための基盤手法である2次元食感マップを、プラントベースフード(plant-based food)のターゲット食品「らしい」おいしい食感の実現へ展開することを目的としている。プラントベースフードをよりおいしくするためには、目標とした動物性食品らしいおいしい食感との差を明確にする必要がある。その手法としての2次元食感マップでは感性的な言葉で表現されるおいしい食感を、時間軸と口腔部位を意識した官能評価と、客観的な機器分析による力学特性(レオロジー)・潤滑(トライボロジー)・構造(モルフォロジー)の物性変化から見える化する。この様に、2次元マップ化することでおいしい食感を理解し易くなり、変化をイメージ化することで、食品構造からおいしさをデザインできる。 本年度は、市販品プラントベースヨーグルトと乳製品ヨーグルトの食感の差異を物性測定・構造観察により見える化した。A(牛乳):“ヨーグルトらしい”、B(豆乳):“ねっとり・とろとろ”、C(大豆):“もったり・ざらざら”、D(ココナッツ):“ふわふわ・口どけが良い”、E(アーモンド):“さらさら・とろーり”について、感性食感発現メカニズムを明らかにした。その結果から、乳製品ヨーグルトらしい食感(牛乳(A))を再現するためには、豆乳(B)では温度上昇前半に伴う粘度変化のなさ・破壊中盤の亀裂発生のなさ、大豆(C)では温度上昇前半に伴う粘度変化のなさ・破壊中盤の亀裂発生のなさ・破壊後の大きな破片形成、ココナッツ(D)では温度上昇前半に伴う粘度上昇・温度上昇後半に伴うG’の急激な減少、アーモンド(E)では保形成のなさといった牛乳(A)との差異を改善する必要があると考えられた。以上のように、プラントベースと乳製品ヨーグルトの感性食感の差異を物性・構造から見える化し、「らしい」食感への改善の方向性を提案できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、市販品プラントベースヨーグルトと乳製品ヨーグルトの食感の差異を物性測定・構造観察により見える化した。具体的には、市販のプラントベースヨーグルト9種、乳製品ヨーグルト1種の計10種類を用い、官能評価の言葉出し・コレスポンデンス分析にかけた結果、食感の異なる5つのグループに分類された。各グループから、A:乳原料、B~E:プラントベースヨーグルト(B:豆乳原料、C;大豆、D:ココナッツ、E:アーモンド)の計5種類を選び以下の分析に用いた。官能評価は、CATA法を実施した。物性測定では、動的粘弾性試験、破断強度試験を実施した。構造観察では、共焦点レーザ走査顕微鏡と走査型電子顕微鏡を用いて、脂肪球分布、タンパク質ネットワークの様子を観察した。その成果を含む形で、2022年8月24日-26日の日本食品科学工学会第69回大会において、プラントベースヨーグルトの感性食感の見える化-乳製品ヨーグルトらしい食感との比較-という演題で発表した。 以上の様におおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、ターゲットとした動物性食品のおいしい食感をいかにして植物性原料素材で実現するか?そのための手段として2次元食感マップの有効性を市販品を用いた実例で示す。さらに、ターゲット食品別に「それらしい」おいしさを示す感性食感の2次元マップを示し、プラントベースフードを試作改良する。 対象の牛乳原料食品として、ヨーグルト以外にチーズ様食品を追加する。さらに、鶏卵を使用した食品もターゲットとする。現在、市販品の分析だけでなく、食品試作も行いつつある。
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